2013年08月06日

「あかりの湖畔」青山七恵

2013.8.5(月)〜

青山七恵あかりの湖畔」2011.11月

読売新聞に連載。

:北海道の湖畔で暮らす3姉妹(灯子とうこ26歳・悠、花映17歳)と父源三
母は行方知れず・・灯子は喫茶店「風弓亭」を切りもり、二女の悠は女優を目指して恋人の隆志と東京へ状況予定、花映は美容師になろうかと考えている・・
灯子は隆志に心を寄せている・・

さびれた温泉街を見下ろす大きな湖のほとり、遊歩道の奥にある「お休み処・風弓亭」の三姉妹。次女・悠は東京へ出て女優を目指し、高校生の三女・花映も外の世界に憧れている。26歳の長女・灯子だけが、生まれ育った場所でいつまでも変わらぬ生活を望んでいた。ある日、一人の青年がやってきて街に住み着く。妹二人は彼こそが灯子の「運命を変える」のではと噂するが...。

yorimo : 「あかりの湖畔」 青山七恵さん

ほっとする連載小説を書きたいと思った

 青山七恵さんは、29歳。5年前、「ひとり日和」で芥川賞を受賞した。
 「いつか小説を書ける人になれたらいいなと、ぼんやり思っていました。17歳のときに、F.サガンの『悲しみよ、こんにちは』を読んで、彼女が18-19歳の頃にそれを書いたと知りました。自分と同じくらいの年齢の人が、こんなに複雑で大人っぽい小説を書けることにびっくりして、私も若いうちに書き始めたいと、思ったんですね」
 それからまもなく、手書きで小説を書いてみたが、ただの文章の連なりのように思えた。大学に入って、学校のパソコンで書き、翌日プリントアウトしてみると「活字になっているというだけで、あ、小説になってる! と、すごく感激して」、1年ほどかけて初めて小説を書いた。大学在学中に書いた3作目で文藝賞を受賞し、作家としてデビュー。2010年7月から翌4月まで読売新聞夕刊で連載された本書は、8作目にあたる。
 「新聞って、すごくたくさんの人に読まれるもので、とくに夕刊は、疲れて帰ってきた人が読むもの。だから、ほっとひと息つけるような小説にしたいなと思っていました」
青山さんはそう言う。
 連載を終える1か月前に、東日本大震災が起きた。小説は最後まで書き終えていたが、全紙面が震災についての記事の中で、この小説の挿絵だけがカラーのまま、ぽっと浮かびあがるように載っていた。
 それから8か月あまり経って、こうして1冊の本になってからまもなく、福島県の主婦から葉書が届いた。
――連載小説をずっと楽しみにしていましたが、12日から新聞がとまって読めなくなりました。単行本が出たのを知って、書店に行くと閉店していて、図書館で読みました。読んでいる間は、放射能のことを考えず、素敵な時間が過ごせました・・・・・・。
 「涙が出るほど、うれしかったですね。世界でたった一人でも、そう思ってくれたのなら、もういいな、と思いました」
読者に、ほっとしてほしいと思って書き始めながら、夢中になると、その向こうに読者がいることを、ときどき忘れてしまうが、忘れてはいけない。自分がなぜ小説を書いているのかという自分への問いかけはいつもあるが、自分が本にたくさん助けられてきたように、自分の書いた本が誰かの小さな手助けになればうれしいと、改めて思った、とも。

丁寧な自然描写と心理描写

 灯子は、温泉街を見下ろす大きな湖のほとりにある「お休み処・風弓亭」の長女で、父と2人の妹と一緒に暮らしている。父は温泉街の旅行案内所で働き、次女の悠は東京へ出て女優を目指したいといい、3女の花映も東京に憧れている。灯子だけが、いつまでもこの風弓亭を守って暮らしたいと望んでいる。
 長期連載にあたって、青山さんが思い浮かべたのは、子どもの頃に時々遊びに行った北関東の湖の風景だった。
 「お土産屋さんが点々とあって、そこで一人で店番をしている女の人を見たとき、こういう場所で生活するって、どういう感じなのだろうと思いました。時が止まっているような不思議な感じがして、いつか、こんな風景を長編小説で書きたいと思っていました」
 知っている景色が抽象化されて舞台ができると、主人公が生まれた。年齢は執筆時の青山さんと同じ26歳で、名前は灯子。
 「ろうそくを大事にもっている女の子のイメージです」
 小説のタイトルも、灯子の名と掛けて「あかりの湖畔」とした。
 冒頭は、風弓亭から見える湖の描写から始まる。
〈よく晴れた、夏の初めの午後だった。
風がひと吹きするごとに、木々の葉先に溜まった光がしたたって歩道に落ちた。・・・・・・〉
細かな書きなおしを何度もしたという冒頭の1ページ余は、「この小説では自然をちゃんと見過ごさずに書こう、という私の思いが現れているところです」という。
 目の前に広がる自然と、ゆっくり時が流れる暮らしを丁寧に書きこみながら、10章だての長編小説に、青山さんは小さな石を投げ入れ、灯子の心にさざ波をつくっていく。東京からやってきた青年、住む人のいない山荘の前のベンチで泣いていた悠、学校をさぼって年上の人とデートしている花映・・・・・・。平穏な暮らしの中で、家族それぞれが秘密を抱えているらしいことが次第に明らかになるが、その全容はわからない。
後半になって物語が大きく動き始めても、灯子はじっとしたまま動かない。
〈自分はいつも、フレームの外にいるべき人間、誰かのためにフレームを作る人間でいたかった。自分自身がその中に入るのは怖かった。〉
 灯子は、むしろ、すすんで、この暮らしにとらわれようとしている。その理由が明らかになったとき、灯子が、はじめて動く。
 「自分のまわりのものを愛するというのはすごくいいことだと思うのですが、それだけに捉えられちゃうと、長い人生の傍らに何か貴重なものが通り過ぎても見過ごしてしまうところがあるんじゃないか、と。彼女がそういうことに気づくまでの一歩が書けたらいいなと思っていました」
 丁寧に描かれた自然描写や比喩を味わいながら、灯子の心を追いたい小説だ。

ご自身で本を購入するのは、実際の書店が多いですか? それともネットでの注文(アマゾンなど)が多いですか?

 本屋さんに行くのが苦手なので、アマゾンですね。
 本屋さんに行くと、世の中にはこんなにいっぱい本があるんだから、人は私の本なんか目も留めないんだろうなって思えてきて、落ち込んじゃうんです。
 でも、ときどき、本屋さんの雰囲気に馴れ、今の動向を探るために(笑)、友達を誘って一緒に行ってもらいます。そうすると、楽しいですね。

テーマなど書こうとする内容の着想は、どのようなきっかけから得ることが多いですか? もっとも多いと思うものを2つ選んでください。

1.友人や仕事仲間、家族などとのなにげない会話から
2.新聞やテレビなどの報道、記事から
3.インターネットの情報から
4.ファンからの手紙、メールなどから
5.別の取材先でのできごとや体験から
6.その他


 1と2。そして、本ですね。


新たに原稿を書く際、気分がのらない場合や、展開に悩まれることがあると思います。その時にはどのように気分転換をすることが多いですか? もっとも多いと思うものを2つ選んでください。

1.お茶やコーヒーを飲んだり、食事をしたりする(喫茶店や飲食店などに行くことも含む)
2.買い物をする
3.本を読む
4.散歩に行く
5.スポーツなど体を動かす
6.掃除や洗濯など家事や家の中のこまごまとしたことをする
7.その他


1と2と4ですね。サッカーの試合を見るのも、気分転換になります。


最近興味のあるテーマ、書きたいと思っているテーマを教えてください。

 文芸誌の連載で、昭和20年生まれの女の人の話を書いています。
 今まで、現代の身近な世界を書いてきたので、生まれていない時代のことを書いて、もっと想像力を使いたいと思っています。
 その一方で、30歳ぐらいの女性の身近なところで起こることも小説にしたいと思います。
 身近なものと身近でないもの、どちらも書いていないと、自分の中で偏りみたいなものが生じて、あまり良くないみたいです。
 長く書いていきたいので、そういうことを真面目に繰り返していくことが大事なんだろうなと思っています。

あおやま・ななえ 
1983年埼玉県生まれ。筑波大学図書館情報専門学群卒業。2005年、大学在学中に書いた『窓の灯』で第42回文藝賞を受賞し、デビュー。2007年『ひとり日和』で第136回芥川賞を受賞。2009年『かけら』で第35回川端康成文学賞を受賞。その他の著書に、『やさしいため息』『魔法使いクラブ』『お別れの音』『わたしの彼氏』等がある。






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2011年10月04日

「かけら」青山七恵

10/1かけら青山七恵2009年9月

第35回川端康成文学賞、最年少受賞作

井上ひさし氏選評より

作者は、風景写真を撮り続ける桐子に徹底してこだわる。別にはいえば作者はかけらほどもない。この小さな思い付きを心から愛し続けた。作者の愛を受けて、この月並みな思いつきが、やがて珠玉のような光を帯び始める。ファインダーを通り抜けていく風景の中に、ゆっくりと現れてくるのは、見たこともない父の姿だった。

7n・・めん棒のようなシルエットの父が私に手を振って、一日が始まった・・
ラベル:かけら 青山七恵
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「やさしいため息」青山七恵

9/29やさしいため息青山七恵2008年5月

芥川賞受賞第1作

ときどき、すべてを簡単にしてもいいような気もする。

社会人5年目で友人なし。恋人は3ヶ月前に出て行ったばかり。
そんな私の前に、行方知れずの弟・緑が現れた

7n・・朝、会社へ向かう電車の中で、弟と4年ぶりに会った。座席に座ってうとうとしかけているわたしの視界に、まず汚いスニーカーが入り込んできた。・・

157n・・立ち込めていく湯気の中で、わたしは目をつむり、冷たい肌が温まっていくのを感じている。狭い浴室に響くお湯の音は、どこかにつながるトンネルを掘る音のようにも聞こえる
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2011年06月22日

青山七恵「魔法使いクラブ」

6/20青山七恵魔法使いクラブ」(2009.11)

離れていった友達、ばらばらになっていく家族。結仁は、自分の世界を取り戻す壮絶な戦いを始めた。
あたしは家に帰って、お兄ちゃんが向かいあっているテレビの中に入ってしまいたかった。そこには外の光は届かなくて、アイやキボウの歌が流れているだけだ。

少女が自立するまでのいやらしく美しい8年間

小学校4年生の結仁は魔法使いになりたいと真剣に願うちょっと変わった女の子。放課後は毎日、幼馴染の史人、葵と魔法使いになるための特訓をしていた。合言葉は
「3人の願いがかなうまで、魔法使いクラブをやめてはいけない」

しかしある日、七夕の短冊にその願いをかいたことがきっかけで一瞬のうちに、クラスの笑いものになってしまう。

ひとりだけ違う世界にはじきとばされたようなさみしくて怖い気持に襲われる

8年後、高校3年生になった結仁はまだ「世界は突然自分を裏切り、はじきだす」という呪いのような記憶にしばられて生きていた

青山七恵(あおやま ななえ、1983年1月20日 - )は、日本の小説家。埼玉県大里郡妻沼町(現:熊谷市)出身。筑波大学図書館情報専門学群卒業。2007年、「ひとり日和」で第136回芥川龍之介賞受賞。

中学生の頃から司書になることを目指し、埼玉県立熊谷女子高等学校卒業後、図書館情報大学図書館情報学部図書館情報学科に進学。図書館情報大学と筑波大学の統合、及び国立大学法人化に伴う図書館情報大学の閉学により、筑波大学図書館情報専門学群に移籍、同学群を卒業。大学卒業後、旅行会社に入社。

2005年、大学在学中に書いた「窓の灯」で第42回文藝賞受賞。2007年、「ひとり日和」で第136回芥川龍之介賞受賞。2009年、短篇「かけら」で、最年少で川端康成文学賞受賞。

★★★

「笑っていいとも!」はもう限界か
松ちゃん「浜田がいなかったらダウンタウンは売れなかった」
<石川梨華>つんく♂映画で初主演 “ホステス篤姫”で「アカデミー賞狙う」
posted by りょうまま at 05:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 青山七恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする