2018年01月01日

カズオ・イシグロ<ノーベル文学賞>2017.10.5・・・「充たされざる者」

2018.1.1

1・充たされざる者


<ノーベル文学賞>カズオ・イシグロさん 長崎出身の日系人10/5(木) 20:04配
スウェーデン・アカデミーは5日、2017年のノーベル文学賞を長崎県出身の日系英国人で作家のカズオ・イシグロさん(62)に授与すると発表した。授賞理由は「偉大な感情の力をもつ小説で、我々の世界とのつながりの感覚が不確かなものでしかないという、底知れない淵を明らかにした」などとした。イシグロさんはロンドンで会見し「世界が不安定な状況の中で、小さな形でも平和に貢献できればうれしい」と語った。授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金900万スウェーデンクローナ(約1億2400万円)が贈られる

1954年、日本人を両親として長崎で生まれた。5歳の時、海洋学者の父が英国政府に招かれたのを機に家族で渡英。ケント大卒業後、ミュージシャンを目指した時期もあった。イースト・アングリア大大学院の創作学科に進み、批評家で作家のマルカム・ブラッドベリの指導を受け、小説を書き始めた。

 82年、被爆後の荒廃した長崎で結婚した女性を主人公にした「遠い山なみの光」で長編デビュー、王立文学協会賞を受賞。この年、英国籍を取得した。86年には、長崎を連想させる架空の町を舞台にした第2作「浮世の画家」でウィットブレッド賞を受賞し、若くして才能を開花させた。

 日本を題材とする作品には、幼いころ過ごした長崎の情景や小津安二郎、成瀬巳喜男ら50年代の日本映画から作り上げた独特の日本像が反映されているといわれる。

 89年、老執事が語り手となった「日の名残り」が英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞を受賞。35歳の若さで英国を代表する作家となった。その後も、音楽家が体験した悪夢のような日々を実験的に書いた「充たされざる者」や、20〜30年代のロンドンと上海を舞台にした「わたしたちが孤児だったころ」を発表。2005年刊行の「わたしを離さないで」は、臓器提供者となるべく育てられたクローンたちの不条理な生をつづり、映画・舞台化されて大きな話題を呼んだ。

 イシグロ作品の特徴は、登場人物が抱える「違和感」「むなしさ」といった感情を、現時点から過去を回想する形で描き出すことが多い。あやふやな記憶や思い込みを基に会話が重ねられ、読み進めるうちに人間の弱さや、互いの認知のずれが巧みに浮かび上がる。

 最新長編作の「忘れられた巨人」(15年)は、アーサー王の死後の世界で、息子に会うために出発した老夫婦の旅をファンタジーの要素を盛り込んで描いた。【高橋咲子】

 ◇毎回新しいものに挑戦

 「日の名残り」など多くのイシグロ作品を翻訳した土屋政雄さんの話 日本人を題材にした初期の作品では日本人性、「日の名残り」ではイギリス人性という、自らの根っこを確認した。それらを経て、「充たされざる者」以降は、毎回新しいものに挑戦していった。SF、ファンタジーも手がけ、今度は何を書いてくれるか。現在のイギリスの混乱した政治状況を考えると、政治的要素を取り込む可能性もあるかもしれない。

 ◇傑出した現代作家

 作家、中島京子さんの話 大好きな作家で、受賞は我がことのようにうれしい。非キリスト教文化圏で生まれた感受性を持ちながら、英国文学の伝統の最先端にいる特異な人物だ。小説でしかできないかたちで、記憶や時代、社会の姿を物語性高く描いており、傑出した現代作家だと思う。

 ◇世界の構築の仕方素晴らしい

 臓器提供のために生まれたクローン人間を描いた「わたしを離さないで」を原作とするドラマ(TBS)の脚本を手掛けた森下佳子さんの話 主観的な文体で、外からの視点ではなく、物語の中の世界に即した視点で最後までぶれずに描き切り、世界の構築の仕方が素晴らしかった。受賞は納得で、世界に認められた人の作品に関わることができ、とてもうれしい。


カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro OBE, 漢字表記:石黒 一雄、1954年11月8日 - )は、長崎県出身の日系イギリス人小説家である。1989年に長編小説『日の名残り』でイギリス最高の文学賞ブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した。ロンドン在住。
長崎県長崎市新中川町[2]で海洋学者の父・石黒鎮雄と母・静子の間に生まれる[3]。祖父の石黒昌明は滋賀県大津市出身、東亜同文書院(第5期生[4]、1908年卒)で学び、卒業後は伊藤忠商事の天津支社に籍を置き、後に上海に豊田紡織廠を設立するに当たって責任者となる[5]。父の石黒鎮雄は1920年4月20日に上海で生まれ、九州工業大学で電気工学を学び[6]、東京大学より理学博士号を授与された海洋学者[7]であり、高円寺の気象研究所勤務の後、長崎海洋気象台に転勤となり、一家で長崎に住んでいた。
幼少期には長崎市内の幼稚園に通っていた[8]。1960年に父がイギリス政府の国立海洋学研究所(英語版)に招致され[9][10][11]北海で油田調査をすることになり、一家でサリー州・ギルドフォードに移住、現地の小学校・グラマースクールに通う。卒業後にギャップ・イヤーを取り、北米を旅行したり、デモテープを制作しレコード会社に送ったりしていた[12]。
1978年にケント大学英文学科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科に進み、批評家で作家マルカム・ブラッドベリ(英語版)の指導を受け、小説を書き始めた。卒業後に一時はミュージシャンを目指すも、文学者に進路を転じた

1982年、英国に在住する長崎女性の回想を描いた処女作『女たちの遠い夏』(日本語版はのち『遠い山なみの光』と改題、原題:A Pale View of Hills) で王立文学協会賞を受賞し、9か国語に翻訳される。1983年、イギリスに帰化する[13]。1986年、長崎を連想させる架空の町を舞台に戦前の思想を持ち続けた日本人を描いた第2作『浮世の画家』(原題:An Artist of the Floating World) でウィットブレッド賞を受賞し、若くして才能を開花させた[11]。同年にイギリス人のローナ・アン・マクドゥーガルと結婚する。

1989年、英国貴族邸の老執事が語り手となった第3作『日の名残り』(原題:The Remains of the Day)で英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞を35歳の若さで受賞し、イギリスを代表する作家となった[11]。この作品は1993年に英米合作のもと、ジェームズ・アイヴォリー監督・アンソニー・ホプキンス主演で映画化された。
1995年、第4作『充たされざる者』(原題: The Unconsoled) を出版する。2000年、戦前の上海租界を描いた第5作『わたしたちが孤児だったころ』(原題:When We Were Orphans) を出版、発売と同時にベストセラーとなった。2005年、『わたしを離さないで』を出版する。2005年のブッカー賞の最終候補に選ばれる。この作品も後に映画化・舞台化されて大きな話題を呼んでいる[11]。同年公開の英中合作映画『上海の伯爵夫人』の脚本を担当した。
2015年、長編作品の『忘れられた巨人』(原題:The Buried Giant)を英国、米国で同時出版。アーサー王の死後の世界で、老夫婦が息子に会うための旅をファンタジーの要素を含んで書かれている[11]。2017年、「壮大な感情の力を持った小説を通し、世界と結びついているという、我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」などの理由で[14]としてノーベル文学賞を受賞

1995年に大英帝国勲章(オフィサー)、1998年にフランス芸術文化勲章を受章している。2008年には『タイムズ』紙上で、「1945年以降の英文学で最も重要な50人の作家」の一人に選ばれた。作品の特徴として、「違和感」「むなしさ」など感情を抱く登場人物が過去を曖昧な記憶や思い込みを基に会話・回想する形で描き出されることで、人間の弱さや、互いの認知の齟齬が読み進めるたびに浮かび上がるものが多い。作家の中島京子は非キリスト教文化圏の感受性を持ちながら、英国文学の伝統の最先端にいる傑出した現代作家であり、受賞は自身のことのように嬉しいと述べている[11]。多くのイシグロ作品を翻訳した土屋政雄はイシグロを非常に穏やかな人と述べた上で、いつかするだろうがノーベル文学賞の受賞はもう少し時間がかかると思っていたので今回の受賞には驚いたと語っている

日本との関わり
両親とも日本人で、本人も成人するまで日本国籍であったが、幼年期に渡英しており、日本語はほとんど話すことができないとしている[17]。しかし、2015年1月20日に英国紙の『ガーディアン』では英語が話されていない家で育ったことや母親とは今でも日本語で会話すると述べている。さらに英語が母国語の質問者に対して、「I'm pretty rocky, especially around vernacular and such. 」など「言語学的には同じくらいの堅固な(英語の)基盤を持っていませんと返答している。最初の2作は日本を舞台に書かれたものであるが、自身の作品には日本の小説との類似性はほとんどないと語っている。

1990年のインタビューでは「もし偽名で作品を書いて、表紙に別人の写真を載せれば『日本の作家を思わせる』などという読者は誰もいないだろう」と述べている。谷崎潤一郎など多少の影響を与えた日本人作家はいるものの、むしろ小津安二郎や成瀬巳喜男などの1950年代の日本映画により強く影響されているとイシグロは語っている。日本を題材とする作品には、上記の日本映画に加えて、幼いころ過ごした長崎の情景から作り上げた独特の日本像が反映されていると報道されている。
1989年に国際交流基金の短期滞在プログラムで再来日し、大江健三郎と対談した際、最初の2作で描いた日本は想像の産物であったと語り、「私はこの他国、強い絆を感じていた非常に重要な他国の、強いイメージを頭の中に抱えながら育った。英国で私はいつも、この想像上の日本というものを頭の中で思い描いていた」と述べた。

2017年10月のノーベル文学賞の受賞後にインタビューで、「予期せぬニュースで驚いています。日本語を話す日本人の両親のもとで育ったので、両親の目を通して世界を見つめていました。私の一部は日本人なのです。私がこれまで書いてきたテーマがささやかでも、この不確かな時代に少しでも役に立てればいいなと思います」と答えた。なお、ノーベル財団では国籍・国境等の変遷に鑑み、出身国に関しては出生国としており、イシグロを日本出身のノーベル賞受賞者と位置づけている

カズオ・イシグロさん
話題作『わたしを離さないで』が映画化、日本公開を前に来日
幸せな記憶は「武器」になる
 長崎生まれの英国人作家カズオ・イシグロさんが、自身の小説をもとにした英国映画の日本公開を前に、10年ぶりに来日した。映画化されたのは2006年出版の話題作『わたしを離さないで』(土屋政雄訳、早川書房)。同名のタイトルで、日本では3月26日から上映される。英ブッカー賞を受賞した『日の名残り』や最新短編集『夜想曲集』など、静かな語り口で胸を揺さぶる作品を発表してきた56歳の世界的作家に、創作の背景などを聞いた。【佐藤由紀】
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 『わたしを離さないで』の主人公キャシーは子供の頃、特殊な施設で育った。今は病院で「提供者」と呼ばれる人々を介護している。施設仲間と再会した彼女は、昔のことを回想しはじめた。実は、施設にいた子供たちは他人を生かすために“作られた”存在で……。
 作品の背景には生命科学の進歩がある。だが、そこで考えたかったのは、医療の倫理よりも、限りある人生という普遍的な問題だったという。
 「人生は、普通に考えられているほど長くありません。作品中の若者たちは悲しい運命を背負っていたが、人生の意味を見つけ、何が大事かを考えて実行しようとした。友情を取り戻すことかもしれないし、手遅れになる前に謝ることかもしれない。短いからこそ、優先したいものが見えてくる
 映画については「予想を超える出来栄え」と評価する。特にキャシー役の英女優キャリー・マリガンを「わずかな表情で深い内面を表していた。高峰秀子や原節子を思わせる」と絶賛した。
 イシグロさんは5歳のとき、海洋学者の父の仕事の関係で、家族とともに渡英。そこで教育を受けた。両親とも日本人だが、82年に英国籍を取った。母親と日本語で話すことはあるが、一貫して英語で執筆してきた。
 その作品では「遠い記憶」がしばしば重要な役割を果たす。「初めて小説(『遠い山なみの光』)を書いたのは、消えかかっていた5歳までの長崎での記憶を書き留めておきたい、という衝動からでした。だから、記憶は私にとって、書くことと密接に関係しています。何をどう記憶し、どう語るのか。記憶によって、自己がいかに形成されるのか。そのことにずっと関心を持ってきました」
 ただ、『わたしを離さないで』の中の記憶は、他の作品とは別の機能を持つ。「死と戦う武器ということです。キャシーは友人や恋人らをすべて失うが、記憶だけは誰にも奪われなかった。彼女を最後まで支えたのが、幸せな記憶です。記憶があれば、死に対して、ある部分では勝ったといえると思う」
 一方、自身にとっての偉大な現代作家は「3M」といい、ガルシア・マルケスさん(コロンビア)、村上春樹さん、コーマック・マッカーシーさん(米国)の3人を挙げた。
 「村上さんは現実と微妙に違う『もうひとつの世界』を描きながら、読む人に親近感を抱かせる稀有(けう)な才能を持っています。驚くのは、世界のどこへ行っても村上さんの作品がよく読まれていること。英国でも翻訳文学は人気がないのに、唯一の例外が村上さんです。世界の人々は日本に関心があるからではなく、村上さんを身近に感じるから読んでいる」
 最近は、自身も日本出身であることを特別視されないという。「日本の経済は90年代から停滞しているといわれますが、私は逆に日本の文化が世界の主流に溶け込んだ時代だったと思う。欧米の若者もポケモンで育ち、東欧ではすしレストランが新しさの象徴になった。日本生まれかどうかがあまり意識されなくなったのは、日本への見方が変わったからかもしれません」
posted by りょうまま at 09:51| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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