2019年02月11日

柚月裕子「盤上の向日葵」「慈雨」「あしたの君へ」

2019.2.8〜

19.「盤上の向日葵」(2017・8
2/11にようやく読了したものの、ラストシーンにがっかり!!怒りすら覚えた( ;∀;)


https://www.amazon.co.jp/盤上の向日葵-柚月-裕子/dp/412004999X
埼玉県で発見された白骨死体と、一緒に埋められていた伝説の将棋駒の謎
各章の終わりに必ず、「次はどうなるんだ」と思わせる“引き"がある。だから一度本を開いたら、もう止まらない。柚月裕子のミステリー長篇『盤上の向日葵』は、謎解きの醍醐味に加えて様々な人間ドラマを巧みな構成で盛り込み、読み手の心をがっちりつかんで離さない。

平成六年、山形県天童市。注目の若手棋士同士による対局の会場に二人の刑事がやってくる。理由は何か。

約四か月前、埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。かつて棋士を目指していた佐野巡査は、県警捜査一課のベテラン刑事、石破と組んで駒の持ち主をつきとめるべく、地べたを這うような捜査を進める。

同時に進行するのは昭和四十六年から始まる一人の少年、桂介の物語だ。長野県諏訪市に暮らす彼は幼いうちに母を亡くし、父親からは虐待を受けて育った。彼を気にかけていた元教師がその人並みならぬ将棋の才能に気づき、東京へ出てプロを目指すよう助言するが、桂介は父親の支配から逃れられない――。

刑事たちと少年、それぞれの物語がやがて冒頭の天童市の場面に繋がることは読者だって分かっている。だが、なぜそこに繋がるのかがなかなか見えてこない。死体となって発見されたのは誰か。なぜ名駒も一緒に埋められていたのか。それらと天才棋士には、どういう関係があるのか。少しずつ事実が明らかになるが、その情報の小出し感が心憎いまでに巧く、緊張感を持続させる。といっても先を急がせるのではなく、各章何気ないエピソードでこちらを引きこむ。虐待親から飴玉をもらった時に少年が見せる明るい表情。大阪の不動産屋の女性事務員の、なんともリアルなお喋り。かつて駒を所有していた人々が吐露する奥深い人生模様。もちろん、将棋の世界が丁寧に描かれるのも大きな魅力。プロ棋士だけでなく、金を賭ける真剣師たちの勝負も迫力満点だ。

それにしてもこの著者、推理作家協会賞受賞作の『孤狼の血』もそうだったが、頭は切れるものの態度が下品、という年配男を書くのがどうしてこんなに上手いのか。部下に対してワガママ三昧の叩き上げ刑事の石破、桂介と親しくなる裏社会の真剣師・東明重慶(しげよし)、そして息子の人生を搾取しようとする桂介の父親。彼らの生臭さが実感として伝わってくるからこそ、終盤にようやく明かされる真実には打ちのめされてしまう。得意技を炸裂させつつ、ここまでの重厚なドラマを完走させるとは。柚月裕子の凄みを改めて知る力作だ。
評者:瀧井 朝世
(週刊文春 2017.10.26号掲載)

内容紹介
実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ?

さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手刑事・佐野は真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは! ?
日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!



2017.8.6(日)

126.慈雨(2016年)

退職後、妻と四国巡礼をはじめた元刑事・・16年前の幼女殺害からずっとつらい気持ちで過ごしてきた・・また同じような幼女殺害が発生。16年前の事件との関連はあるのか・・
元刑事、妻、娘の人生を挟みながら物語は進んでいく。

2017.4.30〜

82.「あしたの君へ」(2016.7)裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。
だが、採用されてから任官するまでの二年間――養成課程研修のあいだ、修習生は家庭調査官補・通称“カンポちゃん”と呼ばれる。
試験に合格した二人の同期とともに、九州の県庁所在地にある福森家裁に配属された大地は、当初は関係書類の記載や整理を主に行っていたが、今回、はじめて実際の少年事件を扱うことになっていた。
窃盗を犯した少女。ストーカー事案で逮捕された高校生。一見幸せそうに見えた夫婦。親権を争う父と母のどちらに着いていっていいのかわからない少年。
心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着き、手を差し伸べることができるのか――
彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。

明るい未来の“予感”を味わう小説『あしたの君へ』 (柚月裕子 著)文門脇 舞以
家裁調査官の仕事は、問題を抱えた当事者の背景を調査し、持っている専門知識を生かして調停委員や裁判官をサポートしながら、紛争を解決に導くことであるという。望月大地は、福森家庭裁判所で実務修習を受けている家裁調査官補である。法学部出身、22歳。生来は人と深く関わることを苦手としていたが、ある家裁調査官との出会いを機にささやかな希望を抱き、この仕事に就くことを選んだ。
 家裁調査官はひとりで何件もの案件を抱えている。窃盗犯の少女、ストーカー少年、離婚調停……ありふれた問題であるかのように日々舞い込んでくる様々な調査書類。「百聞は一見に如かず」と、中でも調査官補に丁度良いとされた事案が大地へと託されるが、一歩踏み込んでみれば、そのどれもが、ひとりとして同じでない人間同士のいびつな関わりから生じた無二の“一大事”であることを痛感するばかりであった。誠実に、饒舌に、己の正しさを主張する者。抑圧され、緊張し、助けを求める言葉すら見失っている者。彼が当初見込んでいた通りの結果を得られることなど一度もなかった。「自分はこの仕事に向いているのか」と自問しながらも、問題の因果を見極めるべく大地は奔走し続け――。
『あしたの君へ』……このタイトルこそ、ありふれた言葉のようでいて、その実、なんと救いの心に満ちた味わい深きものであったことか。物語の行く末を案じる我々にとって、明るい未来を予期するに十分な結びのメッセージであるとも受け取れる。だからこそ、多くの読者が、続くシリーズ化への期待を大いに膨らませてしまうのだ。

http://hon.bunshun.jp/articles/-/5162
悪徳刑事とヤクザ間の抗争を描いた、前作『孤狼の血』が大きな話題となり、日本推理作家協会賞長編賞を受賞。社会派の旗手として注目を集める著者の最新作は、離婚や相続問題を扱う家事事件と少年犯罪を扱う家庭裁判所が舞台となっている。
「これまでの作品の多くは、たとえば殺人事件や万引き、痴漢などの社会的な事件を扱ってきました。今回もこうした事件がなぜ起こったかを探っていく点は変わりません。ただ、離婚やハラスメント、育児に関する悩みは誰にでも起こりうること。より身近な事件であり、ひょっとしたら読者の中にも同じような問題を抱えていらっしゃる方もいるかもしれません」
 しかし、案件自体は一般的なものだったとしても、優等生に見えた少年が起こしたストーカー事件(「抱かれる者」)、一見、理想的な夫との離婚を望む妻(「責める者」)、離婚に際しての親権争い(「迷う者」)など、「家庭の問題は閉鎖的で、夫婦仲や親子仲は外からでは理解しづらい上、法律だけではすべてを解決できない」のが家庭裁判所の難しいところだ。
 主人公の望月大地は、福森家庭裁判所で修習中の家裁調査官補で、周囲は親しみを込めて、彼らを「カンポちゃん」と呼ぶ。だが、家裁を訪れる相談者たちは、まだ半人前の大地に対して、なかなか心を開こうとしない。
「担当の編集者から、最近の若い男の子は職場でもあまり元気がないというのを聞いて(笑)、そんなどこか弱々しい青年が、自分の仕事と誠実に向き合うことによって、静かに半歩でも、前へと進めるような作品になればと考えました」
 優秀な同期や先輩の家裁調査官の仕事ぶりを目の当たりにするにつけ、自分にこの仕事は向いていないのではないかと思い悩み、挫けそうになるが、「そんな大地を書くことで、案外、私も一緒に成長させてもらったのかもしれませんね」と柚月さんは振り返る。
「事件が解決したといっても、それは裁判上の区切りであって、登場人物たちのその後の人生は続いていきます。特に最終話で親権を争う両親に対して、10歳の子供がどう向き合うのかを書くにあたっては、作者としてもなかなか答えが出せずに、連載時と単行本では違う形になりました。結局、それでもはっきりした解答になっていないかもしれませんが、それは読者の方に委ねたい。満面の笑顔とまではいかなくても、この少年の微笑みを想像してもらえれば――小説の中の一筋の光が、誰かのあしたへ進む力に少しでもなってくれたらと願っています」

柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)氏
 1968年岩手県生まれ。山形県在住。
「講座」を長年受講し、2008年にサイコ・サスペンス『臨床真理』(現在宝島社文庫)で宝島社主催の「このミステリーがすごい!」大賞を受賞する(現在単行本・文庫本を含めて累計45万部を突破)。2010年5月に作家横山秀夫の推薦文のついた法廷ミステリー『最後の証人』(宝島社文庫)を刊行し多くの評論家から絶賛される(累計12万部突破)。第3作『検事の本懐』(宝島社、2011年11月)も好評を博し、第25回山本周五郎賞候補に。最新作は伊坂幸太郎、中山七里、吉川英梨とのアンソロジー『しあわせなミステリー』(宝島社)。
  
posted by りょうまま at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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