2020年08月24日

天童荒太「迷子のままで」「ペイントレス」「ムーンナイトダイバー」「歓喜の仔」

2020.8.23〜

73.迷子のままで (2020.5)

【迷子のままで】

p10. 優輔は衝動的に手近にあるものを何でも壁になげつけたくなった・・ぶつけてその音や散らばった破片でこちらの怒りを伝え、相手が委縮し、彼に謝ることによって荒れた勘定を解消したくなる。・・


(あらすじ) 

子どものころ、実父から捨てられるという恐怖を味わった勇輔、子供のころ母親の再婚相手からセクハラ行為を受けたシングルマザーの奈緒は結婚し、奈緒の息子晴馬と家族となるものの、ぎくしゃくして「もうだめかも」と思い始めたころ、勇輔のもとに高校時代の同級生から「お前の子供が殺されたぞ」が殺されたという知らせが入る  お前の子供というのは晴馬ではなく、5年前に別れた(逃げた)元妻瑛理との子ども達海5歳・・(勇輔は20歳の瑛理に子供を押し付けてにげたのに、シングルマザーの奈緒を結婚したという・・あきれる・・)

勇輔は、この世に生きていることになじめなさそうどうやって生きていけばいいかと途方に暮れているように見える瑛理に自分と同じ感覚の持ち主だと感じたらしい

瑛理は母子家庭、勇輔の母も4才のときに離婚した、勇輔は父のもとで育った。勇輔には当時2歳の妹がいたが妹は母が引き取った。勇輔は自分は人を愛することができない人間だと思っていた。。(ではなぜ奈緒と結婚したのか???)

勇輔は、テレビ局の人間に達海のことをいろいろ聞かされ案内されるがなにも思うところはない。。記憶から消すようにいきてきたから・・
・・奈緒の住む街に戻った勇輔は、勇輔と晴馬に別れを言い、絵をもらう。。絵を眺めているうちに駆け寄ってきてくれる子供はもういないのだと腑に落ちる。。

おしまい

迷子のまま大人になってしまうという悲しさ
自分はここにいてはいけない、いる場所はない という心細さ


【いまからかえります】

2018.7.29〜

CIMG1967.JPGペイントレス」2018.4  
テロで体に痛みを感じなくなった青年。それは若き美貌の女医にとって舌なめずりの出る実験台だった。生来心に痛みを覚えたことのない彼女は、快楽の在処を求めてセックスし、解析する。この世が痛みと愛から成り立っているなら、私たちはその向う側を目指すべきじゃないかしら? 愛のモンスターは一体どこまで進化するのか。http://www.shinchosha.co.jp/book/395703/


http://www.shinchosha.co.jp/painless/ ペインレス特設サイト

今回の作品のモチーフは「痛み」です。トライしようと思ったきっかけは何ですか。

天童 最初は、肉体的に痛みを感じない人に対しての興味が強くあって、それもやはりこの世界に対する異議申し立てになる存在だと思ったんですね。現代人は痛みに対してすごく敏感だけど、それを感じない人がこの世界をどう見るだろうかということに興味があった。『家族狩り』を書き終えて、痛みとはそもそも何だろうと思いを巡らせているとき、ふと気づいたんです。我々が本当に痛みに対して敏感な部分、それは実は心なのではないかと。精神的な痛みや怯えが引き起こしている社会的な問題のほうが、より大きいのではないか。そう考えてくると、体に痛みを感じない人間ではなくて、心に痛みを感じない人間を主人公にしたほうが、より力のあるものになるんじゃないかと考え始めたわけです。


編集 主人公・万浬にも、当然ながらいろいろな人々との歴史がありますね。成長期には、教育実習中の女性教師や、妹を精神的限界まで追い詰めたり、サイコパスの殺人犯に接近したりする。しかしここには背景としての虐待といったものは決して描かれないですね。トラウマを抱えた末に彼女が出来上がったわけではない……。

天童 彼女とその一族の歴史に、日本が経験した戦争をも含めて筆を割いたのは、痛みとか怯えとかいった人間が抱えている限界をより浮き彫りにするためです。我々が知性や理性によらず感情のみを優先させ、臆病に生きてきたことによって、世界がもう少しで滅びるかもしれないところまで来てしまった。彼女がトラウマによって存在しているのであればそこが表現できなくなりますから。そしてもう一つのモチーフである「進化」というものにつながらなくなる。

編集 トラウマとは無縁、というところが新鮮ですね。

天童 成長プロセスの彼女は、他者との関係において、自分が痛みを感じないことが、いかに他人に作用し得るかをどんどん試していくだろう。何において試すかというと、やはりセックスだろうと思ったんです。その相手に教育実習生をあえて選ぶ。彼女はそうやって一皮ずつ剥けてゆく。モンスターが少しずつ餌を取り込んで大きくなっていくようなイメージですかね。


童 人の痛みが見えない、わからない、今のこの社会がそんなふうになったのはなぜだろうと。その疑問が頭を去らなくなった。現代では自分の痛みにすごく敏感になった反面、彼も痛い、彼女も痛いという他者の痛み、これを知的に、理性的に捉えて、思いやりの声をかけようというふうに行動するんじゃなくて、むしろ痛みを訴えて立ち上がった人たちに対して差別的になったり責めたりする。例えば沖縄の基地に反対している人に対して、すごく反感を持ってしまう。こうした状況にセンシティヴにならないと、もっと怖い時代が訪れるだろうという意識はありますね。







2017.5.6〜5.7

歓喜の仔」誠、正二、香の兄妹は、東京の古いアパートで身を寄せあって暮らしている。父は失踪し、母は寝たきりの状態だ。多額の借金を返し、家族を養うため、兄妹はある犯罪に手を染める。やがて世界の紛争地に生きる少年たちの日々が、兄妹たちの生と響き合う…。愛も夢も奪われた仔らが運命に立ち向かう、究極の希望の物語。第67回毎日出版文化賞受賞作。 (2013)



ほぼ日刊イトイ新聞 - 天童荒太さんの見た光。

2016.5.18(水)

天童荒太「ムーンナイトダイバー」(2016.1)

ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、秘密の依頼者グループの命をうけて、亡父の親友である文平とともに立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。光源は月光だけ――ふたりが《光のエリア》と呼ぶ、建屋周辺地域を抜けた先の海底には「あの日」がまだそのまま残されていた。依頼者グループの会が決めたルールにそむき、直接舟作とコンタクトをとった眞部透子は、行方不明者である夫のしていた指輪を探さないでほしいと告げるのだが… 311後のフクシマを舞台に、鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たな代表作誕生。

内容(「BOOK」データベースより)

だからこそ潜るのだ。誰も潜らないから、誰かが潜らなければいけないのだと信じる。3・11から五年目となるフクシマ。非合法のダイバーは人と町をさらった立入禁止の海に潜降する。慟哭の夜から圧倒的救済の光さす海へ。鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たムーンナイト・ダイバー | 天童 荒太 | 本 | Amazon.co.jpな代表作誕生。

「ムーンナイト・ダイバー」天童荒太さん 震災5年…鎮魂と生への物語
「ムーンナイト・ダイバー」天童荒太さん ...- 産経ニュース
www.sankei.com/life/news/160120/lif1601200033-n1.html

・・・
テーマに据えたのは、大勢が亡くなった災害などで生き残った人々がかかえる罪悪感「サバイバーズギルト」。「苦しみは、死者の数では計れない。行方不明者家族の苦しみを描くことで、今のわれわれが抱える問題や人間が生きる意味を探り当てられないか」と考えたという。

 ▼復興していない

 執筆開始前の昨年4月には、福島県いわき市から車で国道6号を北上した。広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江町…。古ぼけた車の部品や基礎だけを残して消えた家々、積み上げられた廃棄物など、ひとつひとつが胸に突き刺さった。

 「復興なんか全然していない」。町を歩き浜に出た。死者の亡くなった場所を尋ね歩く『悼む人』の主人公のように片膝を付き、亡くなった人を悼んだ・・・・


▼社会への苦言も

 天童さんは、児童虐待をテーマにした『永遠の仔』、1人暮らしの女性を狙うサイコスリラー『孤独の歌声』などで、密室化し孤立化する社会のあり方に警鐘を鳴らしてきた。東日本大震災は、そうした“今までのあり方”をふり返り、より温かい社会へと変わる契機になると思った。

 しかし、現実は異なる。若者を使い捨てにするブラック企業や目先の利益を求めた不正会計、広がる経済的格差…。小説には、都合が悪いことは忘れて前進しようとする日本社会への苦言も込めた。

「ムーンナイト・ダイバー」天童荒太さん ...- 産経ニュース
www.sankei.com/life/news/160120/lif1601200033-n1.html
posted by りょうまま at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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