短い物語の数々33編。ある人に「なにか話を聞かせてください」とメモをとってまとめた・・写真集を眺めていて目にとまったおじいさんの写真から想像して作ったお話とか。。の集まりなのだろうか。意地悪な人が全く出てこないし、どれもこれも尊い人生のお話のように思えたし、面白かった。「人は生きているだけで価値がある」みたいな言葉を見聞きするけれど、私はどーにも理解できなくてもやもやしている。この小説を読んでいて「生きているだけで価値があるってこういうことかなあ」とうっすら思う。読み進めていくうちに自分の幼少期の出来事や風景など思い起こされてきて、よい読書時間をすごせた。p162「好きなことやらないかんよ、自分が思うことをやり続けるのがいちばん納得がいくから」・・この言葉を自分自身や家族や自分がかかわる人たちに言い続けていこう
2018.9.3〜
91.「公園に行かないか、火曜日に」2018.7
芥川賞に柴崎友香さん、直木賞に黒川博行さん
2014.7.17 19:44 [文学]
第151回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は柴崎友香さん(40)の「春の庭」(文学界6月号)に、直木賞は黒川博行さん(65)の「破門」(KADOKAWA)にそれぞれ決まった。
芥川賞の柴崎さんは昭和48年、大阪市生まれ。大阪府立大学卒業後、機械メーカーに勤務していた平成11年に作家デビュー。4度目の候補で受賞を決めた。
受賞作は東京・世田谷にある取り壊し目前の古アパートが舞台。離婚経験のある元美容師の男と隣人の女らの交流を描き、人が出会い、親密になったかと思えば離れていく都会の日常を緩やかな時間の流れとともに浮かび上がらせる。
直木賞に輝いた黒川さんは愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒。高校の美術教師を経て昭和58年、「二度のお別れ」で作家デビュー。6度目のノミネートで賞を射止めた。
受賞作は、人気のハードボイルド「疫病神」シリーズの5作目。建設コンサルタントとヤクザの相性最悪コンビが、映画ビジネスの巨額資金をめぐって大阪、マカオのカジノへと東奔西走する。
贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。
柴崎友香さん「本当は混乱しています」2014.7.17 23:19 MSN産経ニュース
「春の庭」で第151回芥川賞を受賞、記者会見で喜びを語る柴崎友香さん=17日午後、
芥川賞受賞が決まった柴崎友香さん(40)は黒いパンツスーツ姿で笑みを浮かべて登場し、一見すると落ち着いた感じを漂わせて会見に臨んだ。
−−まず受賞のご感想を
「今回は本当にこんなに大きな賞をいただきありがとうございます。まだ信じられない心地ですが、この賞をしっかりと受け止めて、これから小説を書いていきます。ありがとうございます」
−−ニコニコ動画ですが、ニコ動をごらんになったことは
「ないです」
−−主人公の名前を太郎にした理由は
「東京の街を描いた小説、特に夏目漱石が好きで、上京してきたころには、内幸町とか矢来町とか『漱石の小説に書かれていた街だ』と感動することが多くて、東京といえば漱石の街という思いがあります。特に漱石の『草枕』と『彼岸過迄』が好きですが、『彼岸過迄』の最初の短編の主人公が敬太郎で、そこから一文字足りないですが借りてきて太郎にしました」
−−受賞の知らせはどちらで
「浅草の喫茶店、それからバーで担当さんと。電話が来たときに、最初はあわてて(電話を)切ってしまって。それでもう一度かかってきたときにマークをみたら『拒否』になっていて焦りましたが。電話を受けてしばらく、今回で4回目(の候補)ですが受賞が信じられなかったのですが、ニコニコ動画を見ていた人が多かったのか直後からどんどんメールが来て…。他の賞も合わせると9回目の待ちで、これまでに自宅で待つとかいろんなパターンを試してみました。今回どうやって待とうか、直前まで悩みましたが、古い店の雰囲気が好きで浅草という街も好きなので、浅草で待っていました」
−−今回の作品には柴崎さんの好きなものが全部、入っているような気がするが
「本当に今回の小説はこれまでに書いてきた要素が詰め込まれた小説になりました。最初からそれを意図したわけではなく、書いていくことで結果としてそうなりました。自分ではない他人の気配をふとしたときにリアルに感じる瞬間、それが写真をみているときだったり街を歩いているときに感じるので、そういう瞬間に自分は心引かれているのだと思います」
−−以前「これまでに夢をかなえたことはない」とおっしゃっていたかと思うが、今はどうか
「次へのスタートにまた立てた、という気持ちは変わりません。こんな大きな賞をいただき、改めて書いていかねばと励まされ、背中を押されたような気がしています」
−−候補になったことは多いが、今回の候補はうれしかったと聞く。受賞した今の思いは
「まだ実感を受け止められていません。前回の芥川賞候補から4年間、あいていますが、その間にこの賞が現実的なものになってきたというか、作家の友人も受賞しましたし、実感のあるものに変わってきたように思います。今回、候補になって、本当にいろんな方から『受賞を願っています』と言っていただき、こんなに応援してくださる方がいるのかと、それが何よりうれしかったです。作品を読んでくださっている方が大勢いることが実感できました」
−−先ほどの講評で、終盤の「人称のゆらぎに文学的な効果がある」との評があったが、狙ったものか
「そうですね。小説はどういう構図で世界を認識するかだと思いますが、少し違う角度から読者が世界をみられるようにすることが小説の役割というか、面白さの一つだと思います。今の世界をとらえるときに、客観的なゆるぎないとらえ方というのはできないと思います。いろんな人が見た世界を積み重ねていくことで世界を認識していくしかないんじゃないかと、それを小説の形で表したいと、後半の人称が変わるところはどうしようかと迷いながら書いて、やはり読み手自体が巻き込まれて、読み手がゆらぐようなことが何かできないかな、と考えました」
−−会話が最後、大阪弁になる
「私自身、大阪から東京に出てきて9年になりますが、大阪から出てくる直前までは一生、大阪に住むものだと思っていたので、東京に来てみて東京はいろんな場所から人が集まっている街だと実感できました。それぞれの人の中に複数の場所があることを小説の中で書いてみたかった。いろんな場所に思いをはせながら生きていくのが人間かなと」
−−前回候補になったときと今回との間に『わたしがいなかった街で』という実験的な長編を書いているが、それは今回作に生きているか
「一作ごとの経験が次の小説に生きていると思います。『わたしがいなかった街で』については、私は今40歳で、間の世代というか、戦争と今とのちょうど真ん中に生まれた世代で、自分の世代で書けることが何かあるのではないかとここ何年か考えてきました。今回の作品ではそれはあまり前面に出ていないかと思いますが、そういうことを背景にこれからも書いていきたいと思っています」
−−漱石から影響を受けたことは
「夏目漱石の小説は物語と会話、そして社会について考えていることなどが分かれていなくて、同じ平面上に書かれているように思えますが、そこに一番、影響を受けたように思います」
−−きわめて落ち着いているように見えるが
「よく友達にも『落ち着いていて穏やかで』といわれるのですが、本当は混乱しているのを表に出さないタイプなので…」
−−今の内面を小説家として表現するとどんな感じか
「今、白い空間が広がっている感じで、(報道陣との)間に何か空間があるような、そこをあわてて自分が走り回っているような感じです」
−−最後にひとこと
「本当に今回はありがとうございました。小説の仕事を始めて15年になりますが、書き続けてこられたのは読んでくださった方々、執筆を依頼してくださる方々がいらっしゃってのこと。これからも書き続けていかねばならないということだと思いますので、これからも面白い小説を書いていきたいと思います」