2014年10月25日

「星よりひそかに」「よそ見津々」 柴崎友香著 些細なことに斬新な発見・・「寝ても覚めても」「わたしがいなかった街で」「星のしるし」

2014.10.25(土)

星よりひそかに(2014.4)

誰かが私の恋人のことを好きなのだった――。恋を知らない女子高生、元彼の妻のブログを見る主婦、離婚する男、愛されないモデル。日常に溢れる密やかな恋の出来事を綴る、柴崎友香による待望の最新刊。

星よりひそかに | 株式会社 幻冬舎

2014.9.17

130「星のしるし」(2008)

30歳を目前にした会社員・果絵とその恋人、友人らとの静かなやりとりの中で大切なものが輝き始める。新鋭の集大成的傑作誕生!
30歳を目前にした会社員・果絵と、その恋人、友人、同僚、居候らが大阪の街を舞台に織りなすゆったりとしたドラマ。祖父の死、占い、ヒーリング、UFO、宇宙人……。日常の中にごくあたりまえにあるいくつもの見えない「しるし」が、最後に果絵にひとつの啓示をもたらす。繊細で緻密な描写力によって、世界全体を小説に包みこむ方法を模索してきた、純文学の世界で最も注目される作家の集大成的な傑作です。(NK)
『星のしるし』柴崎友香 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS

2014.8.15(金)

112「わたしがいなかった街で」(2012.6.)

会えない人と、死んでしまった人と、どこに決定的な違いがあるのだろうか。

世界は変わってしまったと騒ぐけど、いつのまにか戻っている。戻ったみたいに、なっている──。大阪で、ユーゴスラヴィアで、墨田区で、アフガニスタンで、世田谷で、イラクで、瀬戸内海で、ソマリアで……、わたしは、かつて誰かが生きていた場所を、生きていた。今この時を確かな言葉で捉えた作家の放つ、圧倒的飛躍作。柴崎友香『わたしがいなかった街で』|新潮社

歴史を与えて、そのかわりに噛み付く
岡田利規

 終わり間際。瀬戸内国際芸術祭を見に行った帰りのバスの窓から夕陽の中の棚田の風景を眺める主要人物のひとり、葛井夏は、その風景の中にたたずむ老夫婦の様子から美しい、そして絶望的な認識を得る。表題作「わたしがいなかった街で」はまずなにより、ここがとてもいい。

 全部ではないけど、柴崎友香の小説の大半は読んできてる。彼女の小説を読んでると、自分がふだん生活を送っていてときおり、写真を撮りたくなることってあるけれど、そのときの状態を追体験してるような気分に、しばしばなる。本書に収められてる短篇のほう『ここで、ここで』に、主人公が写真を撮るくだりがあったりもするせいで、今回もそれは改めて思った。自分の人生をそれ自身の写真を撮るような感じで生きること、その気分が形になってる小説。
 さて、この新刊に収められた二篇のうちの表題作のほうが僕にもたらした印象は、しかしこれまでの作品たちから受けていたそれとは少し変わった。そういう生き方に対する、どことなく突き放すような感じが混ぜられていた。
 現実、というやつが小説の中の登場人物たちに、なんだか噛み付きはじめてもいた。たとえば主人公の「わたし」は、職場の中での契約社員という立場であるとか、三十代後半という年齢の女性であることだとか、そういった、この社会に支配的な、フツーの価値観に噛み付かれている。ロンドンで気ままに過ごしたり、沖縄などリゾート地のアルバイトに出向いてはすぐ辞めて帰ってきたり、というキャラの中井という男もそう。彼はこんなことを言う。「なんか自由な生き方みたいにおもしろがる人おるけど、そういう人はたいがい自分は生活安定してるからな。インテリのジャーナリストみたいなやつでギャルとかホームレスとかに勝手にファンタジー見いだす人っておるやん。現代社会の歪みの中のナントカって。まあ、珍獣見て癒やされる的な感じちゃうの」
 これまでの柴崎友香の小説の登場人物たちは、フツーの価値観にこんなにはっきりと噛み付かれたりしてなかったんじゃないか? 噛み付かれてると認めたり、ましてやそう言葉にしたりなんて、彼らはしなかったんじゃないか? 歯牙にも掛けないでいたんじゃないか? 自分の足場から可能な、ほんのちょっとばかしオルタナティブ、という仕方で生を実践してみせてたんじゃないか? そういった流儀が、『わたしがいなかった街で』では、なんだかずいぶんと脆いものとされてる気がする。小説家自らが率先して、その脆さを露わにしようとしてる気がした。

 それから、本作の中で柴崎友香は、小説の中に歴史――つまり、今ここ、という目に見えるものの背後に存在するもののことだ――を取り込み始めてる。具体的には、戦争、という材料をはっきりと用いることによって。「わたし」が自宅で戦場ドキュメンタリー番組ばかり見て過ごす、というのもそうだし、東京や大阪や広島という小説の舞台になる土地の空襲、爆撃の記憶が小説の中で綴られていくのもそう。
 これら「戦争」をめぐる部分は必ずしも、登場人物たちの日常の描写とスムーズなつながりを持ってるわけではなかったりするのだが、強引な手口を使ってでも歴史を取り込みにいって、それを日常ととにかく接合させようとしていることに、僕は共感したし、もっと言えば励まされた。そうしたことを無理にでもやってみる必要を僕としても感じてる昨今なものだから。作中人物が戦争それ自体を経験してるわけではなく、現在の都市に焼け野原がそれと分かる形で残っているわけでもなく、それでも現在と過去が連関を持ってるという認識が込みになってる小説をどうしても立ち上げたいと思ったなら、もう、強引な手口でいく、というので構わないんじゃないか。

 最後に。本作が、歴史を取り込むことと、現実が作中人物たちに噛み付くことの二つを同時にしているのは――分析はできないのだが――必然的なことなのだという気がする。どちらもが対になってはじめて行われ得たことではないか?

(おかだ・としき 演劇作家、小説家)

柴崎友香『わたしがいなかった街で』|書評/対談|新潮社


2014.10.1・・再読
2013.9.17

寝ても覚めても2010.9

人は、人のどこに恋をするんだろう?……消えた恋人にそっくりな人と恋に落ちた朝子の10年を描き、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞他、雑誌掲載時より各紙誌で話題沸騰、著者初の長篇小説。Amazon.co.jp: 寝ても覚めても: 柴崎 友香: 本

2013.9.8

よそ見津々 柴崎友香著 些細なことに斬新な発見 2010/10/27付 記事保存
(日本経済新聞出版社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 小説家の柴崎友香さん、初めての本格エッセイ集。柴崎さんの小説は、どこかでエッセイと触れ合っているような気がしていたのだが、このエッセイ集を読んで、その辺りの事情がちょっとだけわかったような気がする。小説に変化する直前で止めて、エッセイにまとめている文章があって、それがとてもいい。

 柴崎さんは大阪でずっと暮らしてきた人だ。だから、東京で暮らし始めてから小さなことに差異を見出して、あれこれ考える。

 些細(ささい)なことの中に斬新な発見は宿っている。

 たとえば、パン。大阪では4枚切りや5枚切りが普通だが、東京は6枚切りがスタンダード。8枚切りまである。8枚なんてありえない、と思った柴崎さんは、大阪の友人に相談する。

 そうすると、その友人は、だからテレビドラマで、パンをくわえたまま走っている人がいるのだ、と妙に納得できる意見を吐く。なるほど。厚手のパンでは口にくわえて走れないかも。

 長短さまざまな文章が入っているが、どちらかというと長めの文章のほうが味わい深いような気が。ふんわりした文章はエッセイの内容にマッチしている。

★★★★

(批評家 陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2010年10月27日付]

よそ見津々 柴崎友香著 些細なことに斬新な発見 :日本経済新聞柴崎 友香(しばさき ともか、本名同じ、1973年10月20日 - )は、日本の小説家。大阪府大阪市出身。

大阪府立市岡高等学校、大阪府立大学総合科学部国際文化コース卒。高校時代から小説を書き始める。大学卒業後は4年ほど機械メーカーでOLとして勤めた。

1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞の最終候補になる(受賞者は鹿島田真希)。1999年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャートBEST200』に掲載されて作家デビューする。

2004年、『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化。2006年に第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞し、『その街の今は』で第23回織田作之助賞大賞を受賞。2007年、『その街の今は』で第136回芥川龍之介賞候補、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。同年、『また会う日まで』で第20回三島由紀夫賞候補、「主題歌」で第137回芥川龍之介賞候補。

2010年、「ハルツームにわたしはいない」で第143回芥川賞候補、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。

作家の保坂和志から高い評価を受けるが、三島由紀夫賞選考では保坂との作風の類似も指摘されている(福田和也の評)。

2006年より名久井直子、長嶋有、福永信、法貫信也とともに同人活動も行なっている。

小説
きょうのできごと(2000年1月、河出書房新社/2004年3月、河出文庫)
レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー(『文藝別冊 J文学ブック・チャートBEST200』)
途中で(『文藝』1999年冬号)
ハニーフラッシュ、オオワニカワアカガメ、十年後の動物園(書き下ろし)
きょうのできごとのつづきのできごと(文庫版のみ/『文藝』2004年春号)
次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?(2001年2月、河出書房新社/2006年3月、河出文庫)
次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?(『文藝』2000年夏号)
エブリバディ・ラブズ・サンシャイン(『文藝』2001年春号)
青空感傷ツアー(2004年3月、河出書房新社/2005年11月、河出文庫)
初出:『文藝』2002年夏号
ショートカット(2004年4月、河出書房新社/2007年3月、河出文庫)
ショートカット(『文藝』2003年秋号)
やさしさ(『文藝』2004年夏号)
パーティー、ポラロイド(書き下ろし)
フルタイムライフ(2005年4月、マガジンハウス/2008年11月、河出文庫・ISBN 4309409350)
初出:『ウフ.』2004年5月号〜2005年2月号
その街の今は(2006年10月、新潮社/2009年4月、新潮文庫・ISBN 4101376417)
初出:『新潮』7月号
また会う日まで(2007年1月、河出書房新社)のち文庫 
初出:『文藝』2006年春号
主題歌(2008年3月、講談社・ISBN 4062142151)
主題歌(『群像』2007年6月号)
六十の半分(『朝日新聞』関西版2006年1月5日、12日、19日、26日)
ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド(『Melbourne 1』2006年11月)
星のしるし(2008年10月、文藝春秋・ISBN 4163274805)
初出:『文學界』2008年6月号
ドリーマーズ(2009年8月、講談社・ISBN 4062156830)
ハイポジション(『群像』2005年5月号)
クラップ・ユア・ハンズ!(『Иркутск2』〔イルクーツク2〕2007年12月)
夢見がち(『esora vol・2』2005年7月)
束の間(『esora vol・3』2006年4月)
寝ても覚めても(『esora vol・5』2008年8月)
ドリーマーズ(『群像』2009年6月号)
寝ても覚めても 河出書房新社、2010 
ビリジアン 毎日新聞社、2011 

エッセイ
ガールズファイル〜27人のはたらく女の子たちの報告書〜(2007年11月、マガジンハウス)
ガールズファイル(『ハナコ・ウエスト』2005年6月号〜2007年8月号)
毎日、寄り道。(『ハナコ・ウエスト』2004年5月号〜2005年5月号)※小説
見とれていたい わたしのアイドルたち マガジンハウス 2009.11
よそ見津々 日本経済新聞出版社 2010.9

対談集
ワンダーワード(2008年3月、小池書院・ISBN 4862253071)
ワンダーワード(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1〜vol.9)特別編含む。
京都観光 2024原作/柴崎友香・作画/田雜芳一(『河南文藝 漫画篇』vol.3)
上條淳士とふたたび and 2008 Now――(新録書き下ろし)
共著[編集]いつか、僕らの途中で(2006年2月、ポプラ社)共著・イラスト、田雜芳一
田雜芳一との往復書簡。『河南文藝 漫画篇』2004年初夏号〜2005年新春号連載。
オールマイティのよろめき(extra flight!)(Иркутск2〔イルクーツク2〕)
中原昌也・長嶋有との合作。

柴崎友香 - Wikipedia
posted by りょうまま at 13:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 柴崎友香 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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