2020年10月28日

津村記久子「サキの忘れ物」「エブリシング・フロウズ」「とにかくうちに帰ります」「婚礼・葬礼・その他」「ポトスライムの舟」「ポースケ」「ワーカーズダイジェスト」

2020.10.16 金

CIMG3584.JPG94.サキの忘れ物 「自分のやることすべてに意味なんてないのだ」周囲の人々に大切にされてこなかった千春は高校を中退し病院併設の喫茶店でバイトをしていて半年、毎日来ていた女性客が忘れていった1冊の文庫本をきっかけに変わり始める・・こういうじわじわっとしたお話は大好き。涙もじわーっとでてくる。小さなきっかけで人生が変わり始めることがあると知ると、生きていく勇気がでてくるではないか。

2020.10.28 水

2王国p44〜59・・・ソノミは幼稚園で転んでひざを怪我した。完治するまでの記録。・・ラスト「見守ってるとデリラは漂ってした。あなたが私の存在を信じている限り

3ペチュナホールを知る20の名所 p62〜76

4.喫茶店の周波数 p78〜91 行きつけの紅茶専門喫茶店が閉店になる。私(38才男)は今まで店内で聴かせてもらった話を思い出す

5.Sさんの再訪 ・・大学時代の友人佐川さんから26年ぶりにはがきが届いた。佐川さんのことを思い出すために当時の日記を読み返す。読み終わって、私は夫阪上さんとの離婚を決めた。

6.行列 p102〜p135


2015.2.10(火)~2.16(月)

25.エブリシング・フロウズ(2014.8)

席替え、クラス替え、受験、引っ越し…。中学3年生の人間関係はつねに変わり続ける。大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女の、たゆたい、揺れる心を繊細な筆致で描く。『別册文藝春秋』掲載を単行本化。
エヴリシング・フロウズ(2014年08月)|津村 記久子 |文藝春秋 |商品詳細ページ |丸善&ジュンク堂ネットストア


読了に5日間もかかってしまった途中でほうりなげたくなるのだけれど気になってやめられない。
結局・・じわじわとしみこんできて、ホロリとなきたくなったり笑いたくなったり・・最後「読みきってよかった」とさっぱりした気持ち・・それにしても・・退屈なんだけどやめられないというのは不思議・・
ヒロシくんたちみんなに「・・お疲れ様、頑張ったねー・・」と言ってあげたい・・冷たく笑われそうだけれど・・


★★★★

2014.7.24(木)

まともな家の子供はいない」(2011.8.)

大人なら大人らしくしろ。

父親がいる家にはいたくない。セキコは苦しかった。塾の宿題は重く母親はうざく妹はテキトー。世の中にまともな家はあるのか。怒れる中学3年生のひと夏の物語。

「一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはうまい妹、その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…」14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情が、おかしくも切ない。

筑摩書房 まともな家の子供はいない / 津村 記久子 著

2014.4.14(月)

とにかくうちに帰ります」(2012.2.25)

○「職場の作法」・・静かに仕事をこなしていく田上さんの閻魔帳には・・

・どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。・・
・不誠実さには適度な不誠実さで応えてもいいけれど、誠実さには全力をつくすこと・・

(P17)

2014.3.18

婚礼・葬礼・その他」(2008.7)

面白かった

出だしはやっぱり暗くていじいじしてて・・やれやれと思っていたら・・

どんどん笑えてきて・・爆笑

映画にしたら面白いだろうなあ・・絶対見たいっつ

◆主人公は「ヨシノ」・・結婚式の最中に、上司の父は死んだから・・と葬式に駆けつけるようにといわれる・・85歳で亡くなったという上司の父は、元小学校の校長で、部下の女教師を20年間愛人にしていて他にもちょこちょこ遊んでいたという・・

思えばしょうもないけれども楽しい日々だった。当時はそういう時間に終わりが来ることは頭では理解していたけれど、会社に入り、しがらみに負けて、葬式をやる会館のトイレから友達の結婚式のスピーチをする羽目になるなどとは予想もしていなかった・・P47・・・笑える・・

同時収録「冷たい十字路」(文学界 2007年6月)・・さてこちらは・・

○・・気をつけたって仕方ない、不幸はそんなものかいくぐってやってくる・・P94

★★★

大学時代の友人結婚式に出席中、上司の親の通夜手伝いに呼び出されたОLヨシノ。二次会幹事とスピーチを相方に押し付け、喪服に着替えて急きょタクシーで葬儀場へ。既に大多数の社員が集まり、打ち合わせを重ねるなか、ヨシノを猛烈な空腹感が襲う。「マジマ部長の親父とやら、間が悪すぎる…もう一日ぐらいなんとかならなかったのか」ヨシノのてんやわんやな一日はまだまだ続く。芥川賞候補作。
09年に「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年に「ワーカーズ・ダイジェスト」で織田作之助賞を受賞し、いまもっとも乗っている女性作家の傑作中篇。「冷たい十字路」を併録。文春文庫『婚礼、葬礼、その他』津村記久子 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

★★★

な、なーーんと



芥川賞作家・津村記久子の軽妙な小説の、オーディオドラマ化。
〜FMシアター〜
『婚礼、葬礼、その他』
結婚式とお葬式。それは人を呼び出す「召喚」の魔法―。
【NHK FM】
2014年1月25日 午後10時〜午後10時50分(全1回)
【出演者】
貫地谷しほり 山中崇 市原朋彦 木下あかり
山下容莉枝 佐藤直子 下池沙知 山下真琴
小杉幸彦 夏川加奈子 新名杏梨 田中奈緒子
【原作】津村記久子
【脚色】中澤香織
【音楽】谷川賢作
【スタッフ】
演出:木村明広
技術:若林政人
音響効果:岩崎進
【あらすじ】
「人を呼ぶことは天分。自分にその才能はない」と思い込んでいる女性・ヨシノは、呼ぶことはできなくても頻繁に呼ばれる人生を送っている。ある日、楽しみにしていた旅行をキャンセルしてまで臨んだ結婚式当日、今度は会社の通夜に来るよう命ぜられてしまう…。
婚礼と葬礼という二大行事に「召喚」、つまり呼び出され、そして振り回される主人公の怒涛の一日をユーモラスに描きながら、人生の哀しさと楽しさ、生きることの実感を浮かび上がらせる。
公式HP『婚礼、葬礼、その他』
ラジオで聴くのが大変という方は、パソコンや…
らじる★らじる NHKネットラジオ
スマートフォンのアプリでも♪
らじる★らじるアプリ

【出演します】オーディオドラマ『婚礼、葬礼、その他』|市原朋彦オフィシャルブログ「朋彦の隠れ家」Powered by Ameba

ポストライムの舟」2013.3.4

2014.3.1〜

ワーカーズダイジェスト」2011.3

だらだらしている物語でちっとも面白くない・・・・ぜんぜん読み進めない・・・・さらに以前読んだことがあったようだ・・

◆奈加子 32歳。。10年以上つきあった孝と別れたばかり・・職場の人間関係も危うし

◆重信 32歳・・東京から実家のある大阪に転勤になった。建築中のマンション周辺の一部の住民からの苦情を処理中・・

という状態・・3/3・・「ポースケ」はよかったんだけどなあ
今日で読みおわらなかったら途中でもやめよっと💧

3/5読了・・・ラスとはほのぼのとなってきて良かった・・ほっとした・・読み終えてよかった・・くたびれた・・

2014.2.18〜ただいま眠し・・(4時おきのせいと思われる・・)

2014年第1位になるかも・・

ポースケ」2013.12

ポースケってなんのことよ??いらいらが募る中。。どうたら「フィンランドの祭り、復活祭のようなもの・・」と判明・・なぜポースケがでてくるの??と新たな疑問もわきあがるが・・まずは納得・・・

現在、倒れそうなくらい眠い・・💤💤・・7時から14時までのパート竹井さんのようだ・・
(寒い廊下に出たら・・少し目が覚めた・・しかし長くはもつまい・・)

「ポースケ」は登場人物が多くて・・・・メモメモ・・
舞台が「奈良」というのも判明した・・

主人公ヨシカ(畑中芳夏)・・飲食店経営(コーヒー、紅茶、ケーキ、豚ドンなどの定食)恰幅がよくてきぱき働く

とき子さん・・15時からのパートさん。50代、大人になった3人の子持ち。介護も終了。

竹井さん・・・上司との関係からうつ病になって職場を退社。ヨシカ店へパートにきている。28歳だけどおばあさんみたいなたたずまいを見せることがある。雑学が豊富

ナガセ・・・まかないを食べにくる友人

他、登場人物多数・・

「人は難しい。ひとりになりたいといつもおもっているけれど、完全にほうっておかれるとかまわれたいと思う・・」BYヨシカ

・頭が邪魔なんだと思う。人間はどうして今起こっていないことに苦しんだりするのだろうか。今がなんとか安全ならばなぜそれでいいと割り切れないのだろう。できれば、仕事の合間は頭を切り落として首から下だけで生活したいと佳枝は思う・・・P98


津村記久子(つむら きくこ、1978年1月23日[2] - )は、日本の小説家。大阪府出身。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。『ミュージック・ブレス・ユー!!』で第30回野間文芸新人賞受賞。『ポトスライムの舟』で第140回(2008年下半期)芥川賞受賞。

幼少時には児童書をまねて文章を書いていたが、中学生のころからは音楽に親しむようになって執筆活動を中断。大学入学後に再び読書に目覚め、大学3年から本格的に小説を書き始める[1]。2005年に「津村記久生」名義で投稿した「マンイーター」(単行本化にあたり「君は永遠にそいつらより若い」に改題)で第21回太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年には「カソウスキの行方」で初めて芥川賞候補(第138回)となり、続く第139回でも「婚礼、葬礼、その他」がノミネートされる。同年、『ミュージック・ブレス・ユー!!』で第30回野間文芸新人賞を受賞。同年、咲くやこの花賞を文芸その他部門で受賞。2009年、「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞受賞。2011年、『ワーカーズ・ダイジェスト』で第28回織田作之助賞受賞。2013年、『給水塔と亀』で第39回川端康成文学賞受賞。

人物

日中は土木関係のコンサルティング会社に勤務し、帰宅後に一眠りした後、深夜から未明にかけて執筆活動に取り組んでいる。9歳の時に両親が離婚。大学を卒業して初めて勤めた会社では、上司のパワーハラスメントを苦にして9ヶ月で退社した経験をもつ[3]。

好きな作家としてカート・ヴォネガットとギルバート・ケイス・チェスタートンを挙げている[4]。他にR・A・ハインライン『ラモックス』やアラン・ムーア『ウォッチメン』などのSFも愛好する[5]。

作品一覧

単行本
『君は永遠にそいつらより若い』(筑摩書房、2005年)のち文庫 
『カソウスキの行方』(講談社、2008年)のち文庫  カソウスキの行方(『群像』2007年9月号)
Everyday Write A Book.(『小説すばる』2006年7月号)
花婿のハムラビ法典(『群像』2006年5月号)

『婚礼、葬礼、その他』(文藝春秋、2008年) 婚礼、葬礼、その他(『文學界』2008年3月号)
冷たい十字路 (『文學界』2007年6月号)

『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店、2008年)のち文庫 
『アレグリアとは仕事はできない』(筑摩書房、2008年) 『ちくま』2007年7月−2008年1月連載「コピー機が憎い!」を改題

『八番筋カウンシル』(朝日新聞出版、2009年)
『ポトスライムの舟』(講談社、2009年)のち文庫  ポトスライムの舟(『群像』2008年11月)
十二月の窓辺(『群像』2007年1月号)

『ワーカーズ・ダイジェスト』(集英社、2011年)
『まともな家の子供はいない』(筑摩書房、2011年) 
『とにかくうちに帰ります』(新潮社、2012年)
『やりたいことは二度寝だけ』(講談社、2012年) 
『ウエストウイング』(朝日新聞出版、2012年)
『ダメをみがく "女子"の呪いを解く方法』(紀伊國屋書店、2013年)深澤真紀との対談集
『これからお祈りにいきます』(角川書店、2013年)

単行本未収録作品
炎上学級会(『小説すばる』2007年3月号)
バンドTシャツと日差しと水分の日(『Papyrus』VOL.20)
津村記久子 - Wikipedia
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2020年10月24日

「恋愛」吉田修一コレクション

CIMG3561.JPG  吉田修一コレクション「恋愛


2020.10.20〜

1・最後の息子 p7〜47 1997年

p11愛されるのは簡単、愛され続けるのが至難の業なのだ

僕は閻魔ちゃん(美容師)を愛していない

閻魔ちゃんは毎日酔っている、そして宣言する「私たちは私たちの国をつくるのよ、戦いのない国」

p23僕が付き合った彼女佐和子の話「僕がエンストした車だとしたら佐和子はブレーキが壊れた車」、、次へ次へ上へ上へと目を向けている

僕は長崎出身、右近にだけ言っていたけど詩を書いていた

p25憧れだった右近「神秘的で鍵穴から覗く部屋の印象」退廃的雰囲気、執着心のなさ。朋子はつかみどころのない右近を愛していた・・・退廃はセックスに溺れていた結果だし、執着心の無さももう一つの世界では愛されようとしていたわけで神秘性などひとつもなかった

p28父はただ強く母はただ美しいだけ。結局ぼくは、そんな古臭い家庭に育った息子なのだ (泣きたくなった・・)

p30閻魔ちゃんは試そうとしているのはなく裏切られてみたいのだ。ドラマチックな出来事に飢えている。そう思い当たると自分が情けないジゴロのように思えた。「あなたは役割を果たしていないのよ」と言われている気がした。愛人の裏切りを克服することで愛の確証を得ている。・・寂しがりやの閻魔ちゃん

p32閻魔ちゃんに嫌われたいのなら「ぼくは詩をかいています」といえばいい、嫌われたくないからこそ「邪魔だどけ」と叫ばなければならない。閻魔ちゃんのような人が縋り付くのは探偵小説を読む僕であって(社会とのつながり)詩集を読む僕ではない

p33自分たちを馬鹿にしているのが自分たちなのだ

※※

2.グリーンピース p48〜85 1998年

僕・・・失業中 寝たきり入院中の祖父がいる。
千里・・プロジェクトの責任者を任されるようなバリバリ

鷹野さん
椿さん

千里が用意してくれたグリーンピースを壁になげつけ喧嘩がはじまり、千里は出ていく・・鷹野さんはじめ僕の友人たちと寝ようとしている
僕は椿さんを誘うが椿さんは応じない。僕千里鷹野さん椿さんの4人で食事をしようと計画する。千里の家で料理を作る僕。出来上がりが遅いので帰宅する椿さん鷹野さん。僕と千里は大量の酢豚を食らう・・

意味不明、わけわからない・・のが恋愛なんだな。相手のことを思っているようでして、実は自分中心の思考と行動・・恋愛なのだ


2020.10.21

3.日々の春 P88〜P94 2001年 
新入社員の立野くんは酔うと昔の彼女の話をする。。。

4.24Pieces P96〜p98

5.春、バーニーズで p100 〜 p108
筒井は息子文樹の入園式用に切る服を購入するため妻に連れられて新宿に来た。そこで10年近く前に一緒に暮らしていた人を見かける。・・p106「うんざりするほど誰かに愛されたことのある人間は。うんざりするほど誰かを愛するすべを身に着けるのかもしれない」

5-1.パパが電車を降りる頃 9109〜P110
筒井と息子文樹(は妻瞳の連れ子)

5-2.夫婦の悪戯 p120〜p130
筒井と妻瞳の物語
筒井は瞳に昔オカマバーのママと暮らして食わせてもらっていた時期があるといい、瞳はオジサンに体を売ったことがあるという

5-3.パーキングエリア p131〜140
高校生2年生の筒井。修学旅行先の日光で高校入学祝いに買ってもらった腕時計を置き忘れてきた。
ある日、筒井は会社に行くことをやめて東北自動車道にのった。

最後、日光のホテルから妻に電話して戻ることを伝える・・妻は黙ったホテルの部屋をとり、初老のボーイに筒井を部屋へ案内する・・

※つまらん!!妻できすぎ、嫌み、へどがでる・・とまず思う。・・筒井も幼稚、会社さぼるな・・そういう気持ちはわかるけど。

5-4楽園 p141〜P145
p145 彼女が僕と違う時間を生きるようになって2年。僕の時間が打ち寄せる波だとすれば、彼女の時間は遠く水平線へ消えてゆく白いヨットだ

6.愛のある場所 p148〜p156

私、就職して5年目、サトルに振られた時期、閻魔ちゃんと出会った。そして閻魔ちゃんの店でケンジと出会った。3か月後同棲、ケンジは実家のガソリンスタンドを閉めてほしくないと送金を続けている。・・サトシからやり直したいと連絡があった。身勝手な男、愛を忘れられない私。閻魔ちゃんが言っていた「悔しさと恋愛しているときの気持ちは似ている。キーっとなっているところ」私は全然違うと思いたかった。愛あるところは穏やかな場所であると。

7.愛を誓う P158〜p166

閻魔ちゃんと知り合って20年の時が流れていた。閻魔ちゃんの店で筒井は同じ年の真希と会い一夜を過ごした。
ハイヒールを履く瞳に筒井は手を差し出した。
p160「文樹が2歳のとき瞳と結婚した。文樹を自分の息子だと思って育ててきた。しかしそれが口先だけのことだったのだと、この入院で気づかされた。なぜならこの時筒井は、文樹の代わりになら自分は死ねるといとも簡単に思えたのだ

2015年、真奈美と優菜の結婚式の話・・P166「する、しない」の立場にいる人は「できる、できない」の立場にいる人の哀しみなど想像しないのだ。

7.六丁目の角で p168〜P174 雅司「なんだよ、つまんねえ話ばっか」 かつてイケメンだった雅司は3年前に広告代理店営業職を辞めてからツイてない42才。閻魔ちゃんはいう p170「あんた更年期よ、女とおかまは、昔私モテたのよ。ノンケの男は 昔悪だったんだよって話を始めるのよ」。。ついてないなあと考えていると閻魔ちゃんの話を思い出す
p173「嘘ってさ、人を遠ざけるのよ。あんたがこっちの世界で嘘つかなかったら大丈夫よ。こっちでも嘘つき始めたら・・誰もいなくなる、寂しいどん底へ逆戻り」

8.「愛住町の女」p176〜P185

律子
夫博司・・小野構造株式会社社長

一人娘千鶴が社員の相楽に恋をしている。千鶴は大学卒業後、広告代理店に就職、1年で辞めて2年ロンドン留学ののち、父親の会社を手伝っている。相楽には妻子がいる。
律子は仕事帰りに一杯飲みに行く。。。閻魔ちゃんとの出会いがある・・

9.「女たちは二度遊ぶ」p188〜

どしゃぶりの女」ユカは炊事洗濯掃除なにもしない女だった・
殺したい女」「自己破産の女」「泣かない女」「平日公休の女」他etc

10.「ひなた」p282〜p411


※※※

閻魔ちゃんが経営している新宿2丁目のバーでのいろいろな愛のお話と愛についての考察。
posted by りょうまま at 17:56| Comment(0) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月21日

吉田修一「コレクション。青春・恋愛」「横道世之介」「怒り」上下

2020.10.3 土

青春コレクション
CIMG3560.JPG
@Water(p8〜p50)文学界1998年8月号。。17才高校生最後の夏休みから秋の日々、酒屋の次男凌雲、他3名の男子部員の水泳部の活動の日々を書いている。そりゃあキラキラしてる、高校生最後の夏の話だもの。まぶしい・・けど、実は悲しくつらく現実的な話題も次々披露される。その現実話があるから余計に水泳部の活動の話がキラキラしている。青春という言葉がぴったり・・だけどなんだかもの悲しい。真っ只中にいる本人たちはキラキラしてる実感があるだろうか。10年くらいたって高校生時代を振り返ったときに「キラキラしてたなあ」って 懐かしめたら素敵だし羨ましい 10/5

凌雲 酒屋次男坊、高校卒業後は酒屋を継ぐ。交通事故で亡くなった兄がいた。水泳部のキャプテンだった。母が精神不安定になり入院する
   予定

浩介
啓一朗・・母が37才と若い。家出中
拓次・・母はスナックを経営していて大学には行けそうもない・・

凌雲は思う「プールは男らしくないし押しつけがましくないし清潔で淡泊で大変好ましい。」

A突風文学界1999年12月号(p51〜p82)10/7〜10/11

30才間近の新田は会社の休み、九十九里浜の民宿にきて「バイトをさせてほしい」という。店主もOKする・・不穏だ・・

新田は、豪勢な昼食を用意した奥さんに声をかける・・(新田はかなりいけ好かない奴だ・・悪い奴印象)

p63スリルと退屈は両極端なものではない。二つは大観覧車の同じ籠にのっていてスリルの前の席では、いつも退屈が大あくびをしている。。。」

新田は、「待たれるのは大っ嫌い、ぞっとする」「パーキングエリアがきらい、車がどんどん抜いていくと落ち着かない」「1日にトイレに何度も行く」というやつ。

だらだらと話しがつづいたのち。。新田は突然新宿駅前で奥さんをおろし、自分は、会社から連絡があったから仕事にもどらなければならないと1万円札を握らせる。会社ではトラブルが発生しており新田はうまく立ち回っている・・(最低!!、3日もかかって読んだ結末がこれかっ(# ゚Д゚) 新田は、気が弱くておどおどしているイメージ、それを必死に隠している もちろん必死さをみせない・・

2000.10.11 土

B熱帯魚(文学界2000.11)





2020.10.19 月 今日明日は「青春」を読み続けるのだ。。

bW.命綱 p198〜p222

公平とヤコ 25才、同居中、お互い好きな男子、女子あり。
日曜日、p203朝から気持ちい。高い空には雲ひとつなく日差しは暖かい。柔らかい風が少し冷たい。 公平がツタヤで見惚れていた男子はCDを万引きした。公平は、詰問場面を妄想しつつこっそりあとをつける。ヤコから新宿御苑にこないかとメールが入り向かう。ヤコはビアン友の尚子と話していて、公平はタルタルソースのサンドイッチを食べている。夕飯に天ぷらでもあげようかと話をしながらスーパーで買い物をしての帰り道、コンビニで働いている宮田くんを見つけ公平は眺めるためにコンビニに入る。

ヤコは大学で中国美術を学び、目黒区にある美術館で学芸員をしている。公平は翻訳出版の著作権管理を業務といている社員13名「わかば事務所」で働いている。p214朗らかな人に囲まれてそこそこ楽しい毎日を送っている

p219「散歩に出るつもりの足が止まっていた。ビルの向こうに〜  日曜日の太陽は、投げやりで、自堕落で、そしてなんでこう寂しいのだろうか。寂しくなるのはじぶんだけじゃないんだと思う」  散歩途中の公園で宮田くんに会った後、ヤコがボランティアをしている「緒方まちこ事務所」に行った。

ヤコと公平の母がいた・・・「たぶんこの明るさこそが僕らの命綱なんだと思う

LGBTの公平とヤコ・・まるで普通に明るくしているけど・・少数派であるが故のもやもや感はぬぐえない。もやもや感に向かうヤコとなんとなく抱えて暮らそうとしている公平。。やっぱりもやもやを抱えているLGBTではない人たち。。命綱になるのは「明るさ」

bX 一途 p224〜236 「命綱」の出てきた宮田くんの話だ。東北の山奥から上京し、美容院で髪を整え、渋谷で服を買いそろえると一端の都会人となり、大学で女子から告白されることもあったが、好きでも嫌いでもない相手とは付き合う気になれず断っていると、すっかり評判は悪くなってしまった。 一樹から適当に遊べばいいと言われ振り振られを繰り返している真にあっという間に大学3年生。先週からバイトにきている川本保奈美といい感じだ。。。(東京ロミオの「一途」という曲の話題がはいる)

けど保奈美ちゃんは宮田くんを「好きではない」とい。宮田くんは「オレさ誰かのことを本気で好きになったことないんだ」保奈美ちゃんも「私もそうかも」という

宮田くんは保奈美ちゃんと別れたあと、公園に行き、公平と会い、友達と飲んでいるという公平の部屋にお邪魔することにする。p230

人生はサイコロ?ボールのようなものだと思う。ちょっとしたことで、右に行ったり左に知ったり・・どこへ行くか本人にもわからないことも多々ある・・動いているという前提だけど。・・止まっているとどこにも行けない

bP0「初恋温泉」重田光彦、妻彩子、熱海温泉にやってきた。妻からは「別れたい」と言われている。光彦には突然の話だったが、彩子は2年前から考えていた。光彦は都内に居酒屋4店舗持っている。重田光彦は高校卒業後、居酒屋でバイトを始め・・自分でも店を持ってみたいとおもうようになり現在に至る。
彩子は高校の同級生で、「自分の幸福な瞬間を遠くで喜んでほしい存在、見ててほしい存在」(憧れ??)彩子は離婚したい理由について「今の自分に納得できない」という・・彩子は美代子だか美也子だかと会話していた
「旦那の後ろにじっと隠れているだけ。専業主婦なんて聞こえはいいけどけっこういろんなことにびくびくしている」

p251「あなたっていいときしか見せてみれない。調子が悪い時こそ力になってあげたいのに」・・

高校時代、彩子は入りたい大学があるからと光彦との付き合いを断った。大学入学後、名も知れぬ専門学生になった光彦は「胸張って会えるようになるまで待っててくれないか」といった・・きちんと付き合ったわけでもなのに別れだけはきちんとしていた。

p257「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとはかぎらないのよ」・・薄っぺらい幸せに虚しさを感じる彩子ということか


11.「白雪温泉」 p258〜277
 辻野、若菜 25才、青森青荷温泉ランプの宿へ行く。ふすまひとつで隔てられた隣の部屋は30代のカップル、夫婦ではないのではないかと若菜は言う。

大広間で食事中、会話は交わしていないようだが、隣の部屋のカップルは幸せそうに見える

明け方4時、目を覚ました辻野は風呂へ行く、そこには隣のカップルの男性客がいた。話しかけたところ、男性は耳が聞こえないことがわかり目で会話し微笑みあって終わる・・辻野はこの宿へきてよかったと思う。(私もそう思った、いい話だった

12「ためらいの湯」勇次 同僚だった理沙と結婚して2年目。自分が立てた計画通りにものごとが進んだためしがない。 出張とうそをついて、和美と京都への1泊2日の不倫旅行。和美は大学時代の同級生で化粧品やに勤めていて既婚。

p286裏切者同士が、いつの間にかお互いを裏切るのが怖くて離れられなくなった。

13「風来温泉」 那須塩原駅 加瀬恭介は5年前から保険の外交員、妻真知子(元看護師)は保険の外交という仕事を嫌がっていた(親類知人へ頼みまくるから)・・恭介は工業高校卒業後、1年フラフラ〜塗装工〜先輩野田に誘われて、保険の外交員になった。
毎月の給料明細で勝ち負けを確認する。前夜、真知子から恭介がびくびくしているように見えるといわれてかっとなっり暴力をふるった。

那須塩原駅からホテルまでのシャトルバスには女性が一人乗っていた。山本かおり、化粧品会社を経営しているらしい・・恭介は団体保険をすすめた


13「純情温泉」p311〜338  高校生健二、親には男友達と行くといい、実は真希と阿蘇の黒川温泉に行く

17才の二人・・健二は真希と一緒にいることの気持ちよさがいつかなくなるなんていくら考えても想像できなかった・・(いいなあ17才・・不幸のはじまりでもある・・)

「日曜日たち」p340〜

14「日曜日のエレベーター」p340〜354 失業中の渡辺、馴れない自炊を始めた。池袋西口のワンルームマンションに住んで10年  p341「仕事など探せば見つかる」という楽観が心の中に残っていてその底に残った楽観を指先で掬い取りちびりちびりなめているうちに日も暮れて・・

医者の卵だった圭子と付き合っていたのはここへ越してきて2年目か3年目   p345 誰かを愛するということが好きになることではなく、嫌いになれなくなること だと知った

韓国籍の圭子・・駐車場で家出兄弟にたこ焼きを食べさせた話・・

※圭子との付き合いはじめから終わり、その後・・のエピソード

15「日曜日の被害者」p355〜373

千景と夏生、短大時代からの友人 千景は2週間前に泥棒に入られたと小説の続きをよもうとしていた夏生に電話をしてきた。

p355 「今週は絶不調ですおとなしくしてたほうがいいでしょうと書かれた占いを週の初めに読んでしまったような先走った徒労感

夏生は怖くなって恋人の佐々木に連絡して、佐々木の家へ向かうタクシーの中で、思い出したエピソード・・

7、8年前、夏生、千景、彩と京都へ旅行した。21歳のころ。・・帰り道の険悪状況の新幹線で、子供の兄弟と会った・・その兄弟と千景を襲って泥棒にはいったという若い男二人組が重なるという話

16「日曜日の新郎たち」p374〜p391

健吾、父正勝。正勝は大工で気が短いが東京見物をしたいと言ってきた。



青春から

17日曜日の新郎たち p379〜 2002年

p389何かを忘れずにいたいと健吾は思う。何かを忘れずにいるということが絶対に不可能だと思うから、ますます何かを絶対忘れたくないと思う

p391父親は言う「忘れようとするのは大変なもんやなあ・・忘れようとすればするほど忘れられん。人間っちゅうものは忘れたらいかんものをこうやって覚えておくもんなのやろな・

※泣きそう。父親の言葉は母(妻)を思っての言葉。。忘れたくても忘れられない父と忘れまいと写真を飾ったままの健吾・・相手と関わった年月の違いを感じる

2020.10.20

18日曜日の運勢 P392〜P410

P392 ほとほとツキのない日々が続くもんだと田端は思う

19.日曜日たちp411〜p436

乃里子は10年住んだワンルームマンションを引っ越す。故郷の名古屋に帰るのだ・・

(予想とまるでちがう話の展開に驚いた、同時に泣けた。女版世之介みたいな話だ)

p453 この苦しみの先にいったいなにが待っているのか、それを知っているか知らないか、その違いがあるだけなのだ。不条理な苦しみは、明日を待っていても解決されない


bQ0パレード P438〜p599 2002年

●杉本良介21歳H大経済学部3年、所有車は7万円で購入した中古のすぐ止まってしまうマーチ。

大垣内琴美という美人と千歳鳥山の2LDKのマンションで同居している
琴美が短大のころ付き合っていた彼氏で現在売り出し中の俳優丸谷友彦からの電話を待ちながら暮らしている
琴美のことを涼介の友人の佐久間が好きで告白もしているけれどうまくいっていない
相馬未來、井原直輝という同居人もいる

高校の同級生から、今度オープンするディズニーシーに典子や理沙と一緒に遊びに行くという連絡とともに、真也が死んだという情報が伝えられた。真也は中学の同級生で不良グループの一人、涼介は体育会系グループの一員。

涼介は梅崎先輩の彼女を好きになり、泊りに行き、翌朝、彼女の弟の隣に座ってだらだら涙をながしながらトーストを食べるというシーンで終わる。

●大垣内琴美 23才 無職。。。中学の頃から恋愛ドラマを見続けてきた。短大を卒業して医薬品メーカに就職して、楽しく暮らしていた・・何に対しても興味がない。お前には苦しみも本当の喜びもない。。と言われた気がして、東京へやってきた。今まで唯一苦しめられた丸山友彦の恋のために。丸山友彦はかなりのイケメンだった(パレードが発行された2002年、イケメンという言葉はあっただろうか・・)・・・丸山友彦は芸能人として売り出し中だ。琴美は丸山から連絡があったときだけ会うために生きている。

●相馬未來 24才イラストレーター兼雑貨店店長 p502〜 私が酔って連れてきたらしいサトルと名乗る少年がこのマンションで暮らし始めてそろそろ2週間になる。自称小窪サトル18歳、夜の仕事に勤務。私は彼を新宿2丁目で拾った。・・・p506 今の世の中「ありのままで生きる風潮が美徳のようになっているが、ありのままの人間なんて、私には「怠惰でだらしのない生き物」のイメージしかわいてこない。・・・P508 社長に新宿2丁目に連れてこられたとき、どんな悪人でも入場可能な敷居の低い天国に来たようだと思った。

●小窪サトル 18歳 自称「夜のお仕事」 ※直樹たちのことを「お友達ごっこ」をやっている連中と見抜く、侮れないやつ   p559正直なところここに長居しすぎたかもしれない。こいつらのおままごとにつきあっていると、大検どころか、今に一流企業に就職までさせられちまう

●井原直樹 28才 インディペンデントの映画配給会社勤務・・・・※わりと普通・・・・結末は・・自分自身の想像力のなさが情けない・・

話のラスト展開・・琴ちゃんが妊娠・・P576 相談されたところで

※直樹と美咲の関係は理想的だ、素直に羨ましい →→→ とんでもない勘違いだった。。

※※

読み切った満足感。およそ20編の短編、50人弱の人物の物語はすべて違っている。すごいなあとしかいいようがない。これらの短編が「怒り」「悪人」につながっていったのだなあと思う。さわやか系不穏系の繰り返し。お気に入りは1位「熱帯魚」2位「パレード」だったけど。パレードラストで・・印象に残る第1位はパレードかもしれんと思いなおす。好きなのは「熱帯魚」だ。続いて「恋愛」へ取り掛かる





★★


恋愛コレクション
CIMG3561.JPG

2020.1.10〜

3.CIMG2962.JPG  p29 こうやって会社で嫌なことがあってもふと世之介のことを思い出すとほっとするんだよ、無理しなくてもいいよなって。世之介みたいなやつでもちゃんと生きていけるんだなあって。強くなった気になれる


東京オリンピックの年(たぶん2020年)と25年前(たぶん1995年)を行きつ戻りつ進行していくのでややこしいーー。1995年から25年後の登場人物たちはどんな人生を送っているのか、世之介はどんな関わりをしたのか・・という物語。話の流れについていくのが大変だったけど面白かったな


2014.2.24

怒り」上下

◆主人公は山崎一也 昭和59年生まれ、178センチ、68キロ、28歳。「八王子夫妻殺害事件」容疑者。逃走中
父は邦彦。めっき加工工場勤務42年、母景子、事件前は清掃のパートをしていた。一也にはなくなった兄がいた。一也は幼少時はスターのような存在だったが、小学校高学年より普通の子となる・・

他登場人物多数(多すぎぃ・・
・・愛子:「あまり役にたたないお守りのような存在・・」いないと気になるような女の子・・情にあつい・・登場人物はみな情にあつい??人ばかりのようにも思うが・・

優馬・・・広告代理店勤務。恋人?は直人。母と兄との3人家族で育つ。新聞配達をするような貧しい境遇ではあったが、地域の人のおかげであたたかい思い出が多く残る豊かな少年時代をすごしてきた
母はがんで闘病中。余命少ない。兄は友香と結婚し、生まれて間もない娘もいる。

◆直人・・・いつしか優馬の同居人となっている

殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。事件から1年後の夏、物語は始まる。逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?

内容(「BOOK」データベースより)

殺人事件から1年後の夏。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿のサウナで直人と出会い、母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合う。それぞれに前歴不詳の3人の男…。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!

Amazon.co.jp: 怒り(上): 吉田 修一: 本

【著者に訊け】吉田修一 市橋達也事件念頭に置いた『怒り』

2014.02.23 16:00:27
by NEWSポストセブン

【著者に訊け】吉田修一氏/『怒り(上・下)』/中央公論新社/各1260円

 角度や社会性を孕(はら)む「3」が、絶妙に奏功した作品だ。房総半島の港町・浜崎に暮らす〈洋平〉〈愛子〉親子の前に現れた、まじめだが過去を語らない青年〈田代〉。大手通信会社に勤務する〈優馬〉が、ある時〈発展場〉で出会った〈直人〉。わけあって沖縄・波留間島に母と身を寄せた高校生〈泉〉が、無人島の廃墟で出会う謎の男〈田中〉……。

 この3人の身元不詳の男を巡り、千葉・東京・沖縄の3地点に同時進行で隣り合う物語を、吉田修一氏の最新作『怒り』は描く。

 発端は1年前に八王子で起きた夫婦惨殺事件。現場に〈怒〉と書き殴った血文字を残し、現在も逃亡中の犯人〈山神一也〉は、大阪市内の整形外科で顔を変え、目撃情報は全国各地に及ぶ。

 実は自分の知るこの男が山神ではないかと、社会の隅々に疑念が広がってゆく光景を、「3」は皮肉なまでに象徴していた。果たして山神は田代か直人か田中か。いや、“3分の0”であってほしいと願わずにいられないほど、誰かを信じたいのに信じきれずにいる人々の“信頼”を巡る物語である。吉田氏はこう語る。

「念頭にあったのはお察しの通り市橋達也の事件です。といっても僕は彼の2年半に及ぶ逃亡劇や事件そのものより、目撃情報の通報者に興味があった。街で似た男を見た程度ならともかく、身近な人間に対して疑念が生まれていく“事件の遠景”に胸騒ぎを覚えたんですね。

 当初は立場や関係の違う設定を十数通り考えたんですが、さすがに全部は書き切れず、絞った結果がこの3地点。そして3人のうち犯人を誰にするかも決めないまま、彼らの正体を巡って引き起こされる人間模様を書き進めていきました」

〈犯行後、男は六時間も現場に留まり、そのほとんどを全裸で過ごしている〉

 帰宅直後の保育士及びその夫を殺害し、熱帯夜にエアコンのスイッチを探してか部屋中に指紋を残した立川市の無職、山神一也、28歳は、八王子署〈北見〉らの捜査を逃れ、姿を消した。左利き。右頬に3つのほくろ。また自宅に〈ゲイイベント〉の予定が残されていたことから女装の想定写真も公開し、テレビの公開捜査番組でも情報を募集したが、足跡は依然断片的だ。

 そんな中、浜崎では愛子が漁協に勤める父・洋平と田代に毎日せっせと弁当を届け、東京・桜新町にある優馬のマンションには新宿の発展場で一夜限りの関係を持った直人がなぜか転がり込んでいる。

 洋平は人を疑うことを知らない愛子をつい先日も歌舞伎町のソープから連れ戻し、2か月前から港に居着いた田代に好意を寄せる娘をどこか諦めがちに見ていた。一方優馬も仕事や家族関係に恵まれながらゲイゆえに孤独を抱え、刹那的快楽に逃げこんできたが、今では無口でどこの誰とも知れない直人を〈自分より大切〉だとすら思う。

 例えばある日の仕事帰り、優馬は両手にコンビニ袋を提げて歩く直人を見かけたのだ。袋の中で傾く弁当を彼は水平に保ちたいらしく、よろよろ歩いては立ち止まり、弁当を膝で立て直そうとする姿に笑いを堪えながら優馬はふと思う。〈相手の何を知れば、そいつを信じられるのか〉〈まさか、この姿じゃないよな〉〈この後ろ姿で相手のことを信じろってのは無理だよな〉……。

 優馬そして洋平たちも、目の前のその姿を信じてしまえばよかったのだ。相手を信じる条件や担保を求めるあまり、彼らはせっかくの信頼に自らヒビを入れ、傍から見れば奇蹟にも映る関係が失われるのは、何も本書の3地点に限らない。

「結局は相手を信じるしかないんですけど、その信頼の根が意外と脆弱なんですよね。タイトルも山神の怒りというよりは、大切な人を信じきれない自分に対する怒りで、洋平は愛子が幸せになることをどこかで信じきれず、優馬にしてもがんで入院中の母親に対する思いまで共有してくれる直人を恋人と呼べずにいる。その愛情や信頼を認めたい心に何かが蓋をする。要するに〈自信〉がないんです」

 一方泉と同級生の〈辰哉〉にも悲劇が待つ。あるとき那覇で米兵に襲われた泉との約束を彼は彼なりのやり方で守ろうとし、なおも信じあう彼らに試練を与える作家の非情を恨みたくなる。

「ですよね……。ただそれも含めて“隣町に降っている雨”みたいな部分はあると思うんですね。この中に沖縄と東京と千葉を通過する〈台風〉が出てきますが、僕らはよその町で降る雨の、傘までは心配しない。でも山神の事件が方々で信頼を蝕むように何かしら関係はあって、基地や原発問題もたぶん構図は同じなんで」

 若い泉や辰哉はもちろん、自分で自分に蓋をする優馬や洋平が、言葉にできない感情を持て余し、あるいは言葉に背かれる瞬間を氏は丁寧に掬い取り、それこそ言葉に対して全幅の信頼を置いていないかにも映る。

「確かに疑ぐり深くはありますね。例えば僕は誰かを苦手だなと思った次の瞬間、『話してみたら何てイイ人だ』と思ったり、情けないくらい意見がコロコロ変わる(笑い)。でも物事の見え方は場所や距離次第で変わるものだし、自分の言うことが常に正解だと疑わずにいられる人が眩しいくらい。要は自分に自信がないだけですけど、だから人は人を信じたいとも思えるんだし、僕の場合は小説を書くんだと思います」

 そんな吉田氏が描く事件の遠景にいつしか心は奪われ、彼らの関係を何とかして守りたいと思うほど愛してしまう。そのとき隣の雨はもう、私たちの雨だ。

【著者プロフィール】
 吉田修一(よしだ・しゅういち):1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。1997年『最後の息子』で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞をジャンルを超えて受賞し、話題に。2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞。映画『悪人』では脚本も担当し、『さよなら渓谷』など映画化作品多数。174cm、63kg、O型。

(構成/橋本紀子)

※週刊ポスト2014年2月28日号
【著者に訊け】吉田修一 市橋達也事件念頭に置いた『怒り』 – SNN(Social News Network)
吉田修一

(よしだ しゅういち、1968年9月14日 - )は、日本の小説家。

長崎市出身。長崎県立長崎南高等学校、法政大学経営学部卒業。その後、スイミングスクールのインストラクターなどのアルバイトなどを経験。1997年、「最後の息子」で、第84回文學界新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作で、第117回芥川賞候補。

2002年、『パレード』で、第15回山本周五郎賞を受賞し、同年には「パーク・ライフ」で、第127回芥川賞を受賞。純文学と大衆小説の文学賞を合わせて受賞したことで、山田詠美や島田雅彦と同じ系統のクロスオーバー作家が現れたと話題になった。

2003年、布袋寅泰のシングル『NOCTURNE No.9』のカップリング「グレイト・エスケイプ」で、作詞に挑戦。

若者の都市生活を描いた作品が多かったが、殺人事件を題材にした長編『悪人』で2007年に第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞を受賞。 

2010年、『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。

吉田修一 - Wikipedia
ラベル:吉田修一 怒り
posted by りょうまま at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月16日

宇佐見りん「かか」

2020.10.16 金

CIMG3585.JPG 93・かか

p55「うーちゃんはにくいのです。ととみたいな男も、そいを受け入れてしまう女も、あかんぼうもにくいんです。そいして自分がにくいんでした。自分が女であり、孕まされて産むことを決めつけられるこの得体のしれん性別であることが、いっとうがまんならんかった。男のことで一喜一憂したり泣き叫んだりするような女にはなりたくない、誰かのお嫁にも、かかにもなりたない。女に生まれついたこのくやしさが、かなしっみが、おまいにはわからんのよ」

★★★

ひらがな多用の物語はとっても読みづらいしくたびれる。けれど、主人公うーちゃん19才の過酷な生活とつらい苦しい感情を表すには平仮名多用がぴったりだったのかなと思う。うーちゃんはかか(母)になることが夢だった。かかが大好きだった。成長につれかかを憎むようになるが・・
。かかへのぐちゃぐちゃな気持ちと決別するために、うーちゃんはかかの手術の前日に旅に出る。・・母と娘の物語は数多くあって、辛さ苦しみ生きづらさを延々と述べた後、どうやってそこから抜けていくかという展開になる。うーちゃんの物語は・・すさまじかった。という感想。SNSコミュニティでなんとか生きながらえているという様子もよくわかった。10か月の妊娠期間中、母と子はべったりくっいている。お互いになくてはならない存在、分身のような存在になってしまうのも理解できなくはないなあとこういう話を読むたびに考える。
posted by りょうまま at 05:21| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月15日

桜木紫乃「家族じまい」「ふたりぐらし」「砂上」「無垢の領域」「ラブレス」「ワン・モア」

2020.10.14水 再び読み始めた・・・昨日まで若林さんの本を読んでいたので、現実へ引き戻された感あり。登場人物の年齢も似てるし

第1章 「智代」 ・・だらだら続いて、伏せんがいっぱい広がって。 第2章「陽紅」 「陽紅」ようこ26才、母は聖子55才、結婚と離婚を5回繰り返しいまはワンルームマンションに一人ですみスナックを経営している。悩む前に走り出すタイプで「陽紅」は「ようこ」ではなく「ぴんく」名付けた。(名付けた理由は当時ピンクのモーツアルトという曲がはやっていたから)、陽紅は22才のとき結婚離婚をして、現在は農協勤め。智代の義母「片野うた子」に請われて(孫がほしいから)弟涼介55才と結婚しようとしている。陽紅はパン屋開店の夢を持っていた。

※ 聖子のような人物は大好きだ、はちゃめちゃで明るい。智代は普通・・円形脱毛症に悩まされている啓介は、子供二人が独立して気が抜けたようだ・・むなしさを感じている。・・「でかい人生にしたい」と熱望した父は思い描いた人生にはならず年老いて、その父の女遊びに悩まされた母は天使(認知症)になった

p65 聖子は陽紅に言う、「請われて嫁になってみるのも経験さ。やっぱり駄目だと思ったら、もらうもんもらって別れなさい。お前は若い、やり直しがきくうちに結婚でもなんでもやっておきなさいよ」

片野家は離農しており資産家。 p79「この町ではご近所の噂話がいちばんの好物」

※ 55才にして女性未経験かもしれない涼介の取り扱いについて指導する聖子の物言いはさばさばとしているが、陽紅の気持ちには寄り添ってくれない

涼介は両親をあんしんさせるために陽紅と結婚・・(※あんまりではないか!!するつもりがないならそう両親にいうべきだった)

p94 好きなだけではできなくて、好きじゃないとできないこと・・仕事と結婚はよく似ている

涼介はさらに・・孫を望む両親へ「子供をなんとかしたいと思っている」といいう・・(・※最低の男だ!!!)さらに、どんな方法でもいいから子供を作ってきてほしいと陽紅へいう 。無意識の狡さ・・涼介がいちばん優先させたいものは「己が傷つかないこと」
陽紅は元夫と関係を続け妊娠した

第3章「乃理」。。高1聖也、中一次男、小4長女 函館の借家で10年暮らしている。44才、パスタ専門店でランチタイムのアルバイトをしている。毎日、認知症の母サトミに電話をする。3才年下の夫徹は優しい。その優しさは万人に向けられた親切に似ていると乃理は考える。
釧路に住む父親が体調を崩し救急車を呼んだ日・・夫の徹の言葉から p130徹は人としてなにひとつ間違ったことを言っていない・・ことがキツイ (※あぁ・・自分もまっとうな人正論をかざす人が苦手だ・・どーも信用できないときがある・・妬み嫉妬だともおもうのだが)

p152 乗と父親の会話・・「嫁に行った娘に世話になることだけはしないでおきたいと思った」「嫁に行ったって親は親だもん、お互い心配するのは当たり前だよ・・」( ※ しらじらしい・・背中がぞわっとする・・)
徹は乃理の両親に函館にきてもらったらどうかと提案し、乃理父はそれを受け入れる、別荘として函館に一軒家を購入するという。乃理は親に選ばれたのだ。・・・・乃理は良い娘、良い妻、母になるために・・飲酒を続ける・・父は言う「お前は俺と同じ性格らしい。人に勝つか一発あてないと安心できない性分・・なんでもない日常なんてのはえらく耐えがたいものなんだろうな」・・( ※ 乃理のことが理解できない・・

第4章「紀和」 音大を卒業後旅行会社に勤めたが半年で退職、サックスの演奏活動にはいった。20代半ばで母とふたり暮らし。離婚で別れた父とは良好な関係だ、楽器も父に買ってもらったし、今もお小遣いをもらっている。  父に都合のよい娘に育った感は否めない。ピアノ奏者篠原は「お前は気分が顔に出るから演奏家に向いていない」という・・紀和はフェリーの演奏中、老夫婦に会う(この夫婦は乃理と智代の両親)老人(乃理と智代の父)はいう。「好きでやっているというあきらめが助けてくれる」「学ばないこと、負けん気が強いことが災いして人に勝つことばかり考えてきた・・娘ふたり生まれても年に一度の大会が最優先だった・・

第5章登美子 82歳長く旅館の中居をしてきた。50のころ離婚。今は漫画本を読むか編み物をして暮らす。阿寒から釧路に住む娘「萌子」60歳のもとへ行く。下の娘は「珠子」 萌子は45歳のころ離婚、萌子の娘は父親についていった。 萌子は鍼灸院に勤める傍ら健康体操の指導もしている。「私、今日で母さんを捨てることにしたからよろしく。結婚することにした、母さんて情がない。暇さえあれば漫画と編み物・・子供は産みっぱなし放し飼い、珠子が入れ墨の男と出た後の心配もしない、夫が亡くなっても涙も流さない、あんたには家族ってものがないんだよ」・・帰り道、登美子は妹の「サトミ」を思い出した、どうしているだろうと。


10/15朝読了・・家族とはやっかいなものだ・・いや、あらゆる人間関係がやっかいなんだ・・いや生き続けることが厄介なんだ。。と様々思う
第1章「智代」こそだらだらしたが、第2章からは一気読み・・「陽紅」「乃理」「紀和」「登美子」各人とその家族の物語・・(すべて違う物語を描く作者さんすげぇっ)家族ってなんだろう、幸せの象徴の様子を見せるときもあれば、うっとおしい重苦しい、憎しみが渦巻く場の時もある・・家族なんてくそくらえっと思ってみても・・「個」の時間が続くと、少し寂しい・・生きていくって本当に大変だ。感想はまとまらない。。私は「登美子」さんタイプかなあと思ってみる。


2020.10.3

90. 家族じまい 2020.6

北海道江別市に住む理容師パート主婦智代48歳、息子の高校受験を機に自宅購入から8年、子供2人は独立し夫婦二人暮らしになった・・夫には10円玉のハゲが現れ、函館に住む妹からは「母が認知症のようだ」と連絡がはいる・・最初の3ページくらいで、あぁ私たち年代の話だ、読みたくない!!・・そう、私も大事なことからは目をそらして生きているの。。(最後まで読みます・・気になるもの)

★★★

北海道江別市に住む理容師パート主婦智代48歳、2、3年ごとに転勤の「しなやかな柳のような男」夫、子供二人とともに北海道内を移動していた(風に吹かれるように圭介の人生と手をつないで生きてきた)が8年前、息子高校受験前に自宅を購入、子供たちは独立し、今は夫婦ふたり暮らしとなった。「空の巣症候群」はきていない。暮れ間近、夫啓介の頭に10円玉はげを見つけ、函館にすむ妹からは「母親が認知症のようだ、我が家には受験の子供がいるから様子を見に行ってほしい」と連絡がはいる・・

智代はほぼ実家とは絶縁状態、実家は理容店だったが父親が潰した。お客だった圭介と家を飛び出すように結婚した。

日々の生活に追われ、根本的問題からは目をそらして生きてきた

p7 日常に生まれるずれや違いに気づくのは、交わす言葉ではなく、顔色がいい悪い、あるいは機嫌がいまひとつ、風邪気味か飲みすぎかといった、わかりやすいことばかりだ

★★




2018.11.30   「ふたりぐらしCIMG2153.JPG   p70「必要じゃない仕事なんてないと思います」


ふたりぐらしインタビュー

2017.12.25(月)砂上・・実に面白かった!!!


2016.1.4(月)

無垢の領域(2013.7)

2014.2.16(日)〜2/17読了・・2013年島清恋愛文学賞受賞作

ラブレス」(2013.2〜)

北海道釧路近く(。。でもない・)貧しい開拓村で育った百合江と里美の人生の物語。開拓民の両親を持つ百合江は・・あまり物事を深く考えず、くよくよせず前に前に進んでいく・・

※ふと・・里田まいちゃんやジャンプの葛西選手の顔が浮かぶ。二人とも道産子だ。明るくてたくましいイメージがある。そして道産子はとっても情にあついのだ(とても親切・・)
北海道・・特に帯広あたりまで行くと・・あまりにも広大すぎて、悩むことがばかばかしくなってくることを思い出す。。ただただ圧倒される広さだった。。懐かしい・・

※小説には・・2人の娘、理恵と小夜子も登場
ラスト。。理恵は小説家になろうとしていて、百合江と里美を題材に小説を書こうと決める
書かずにはいられなくなるのが小説家なのだと。
小説家のおかげで、さまざまな人生を送った人間たちを知ることができるのだなあと思う

※小説のラスト・・百合江は宗太郎に看取られながら黄泉の国へ行く・・というお話はできすぎだとは思いつつ泣けてくる・・こんな人生の終末だったら悪くないよねと思わせるにはよいんだろうなあ。「帳尻あわせ」という言葉が理解できる

ラヴレス

桜木紫乃/著


愛は要らない、と言える狡(ずる)さも愛が欲しい、と叫べる強さもその女にはなかった。それでも――。

父親の酒と暴力に支配される愛のない家――。北海道の開拓村から奉公に出された百合江(ゆりえ)は、旅の一座に飛び込む。「歌」が人生を変えてくれると信じて。押し寄せる波に翻弄されながら一切の打算なく子を守り生き抜いた女の、他人の価値観を寄せつけない「見事」な生が、息もつかせぬ圧倒的な筆力で描かれる。新感覚のストーリーテラー北に現る。

桜木紫乃『ラブレス』|新潮社

もはや“悪魔的”。なんという小説なんだ……。村上貴史

 桜木紫乃の一年ぶりの長篇である。前作『硝子の葦』は、もう手放しで絶賛するしかない出来映えの一冊だったのだが……今回の『ラブレス』はそれ以上だった。
 従姉妹の杉山理恵からの電話を受けた清水小夜子が、理恵の母である杉山百合江の様子を見に行くことになる場面で、序章は始まる。この十ページほどの序章で、桜木紫乃は、小夜子と理恵という四十代半ばにさしかかった従姉妹の暮らしぶりや、二人の母である百合江と妹の里実の間がぎくしゃくしていることを簡潔に読者に伝え、そして生活保護を受けていた百合江が古い町営住宅で、ある位牌を手にして意識不明に陥っている姿を提示する。そんな百合江を発見した小夜子と里実が救急車を呼んだところで序章は終わる。
 続く第一章の冒頭には、昭和二十五年頃の標茶町の描写が置かれている。生まれてすぐ父の妹に預けられていた里実が、十歳になってようやく姉の百合江や三人の弟たち、そして両親と一緒に暮らすことになるという場面だ。夕張という当時の北海道にあってはそれなりに進歩的な町から、全くの田舎町である標茶に唐突に送られた里実が抱えた衝撃と、それにしてもあまりにかたくなな里実の態度に反発する周囲の人々が描かれ、暮らしぶりが上向かずに酒におぼれる父の姿が描かれる。百合江は、中学を出て薬屋に奉公に出されることとなり、その壊れかけた家庭をあとにする。そしてさらに、薬屋での不愉快な出来事を契機に、十六歳にして旅芸人の一座に加わり、この土地を去ってしまう。
 こうして幕を開けた『ラブレス』は、そのまま人々が居場所を探す物語として進んでいく。百合江と里実を中心に、小夜子と理恵を加え、彼女たちが過ごしてきたいくつもの時代のエピソードを積み重ねて。
 第一章の冒頭を眺めてみると、里実が、夕張の居場所が偽物であり、実家でも居場所を見つけられずにいる様が描かれている。その一方で、奉公に出された百合江が、自らの決断で新たな居場所を求めて動く――それも定住地を持たない旅芸人一座に居場所を求める――様も見ることになる。しかもその彼女たちの姿を、読者は序章でいったん娘たちの(特に小夜子の)視点に同化させられた直後に、今度は百合江と里実の立場から見せつけられるのである。いやはや、淡々とした筆致で綴られる彼女たちの姿のなかから、なんと複雑な香りが立ち上ってくることか。
 夕張から標茶、標茶から旅芸人へという地理的な面での居場所探しは、釧路、東京、仙台など、その後も本書全体を通じて続けられる。百合江だけでなく里実も動く。彼女たちの親や弟たちも動く。そんななかに、土地を巡る詐欺のエピソードを放り込む桜木紫乃のセンスたるや、もはや悪魔的というしかあるまい。さらに、そうした居場所探しを続けた人々が一度は過ごした土地である標茶を、終章で理恵と小夜子が訪れるシーンもあり、それも心に深く深く沁みてくる。
 彼女たちが地理的に移動したのは、生活のためでもあるが、本質的には人間関係のなかでの居場所探しだ。親子、夫婦、姉妹。著者は、各登場人物についてしっかり人として造形し肉付けしたうえで、これらの人間関係を、様々な角度から幾度も吟味している。それも、たとえば従姉妹という関係の背後に隠された事実をあとから提示するといった手段を通じて巧妙に読者を操り、読者をも巻き込む形で吟味しているのだ。それに際して著者は、語ること、語らないこと、語るタイミング、そして語り手をきっちりと計算している。そのうえで各人の各時代のエピソードを縒り合わせ、テネシー・ワルツの歌詞などを絡めながら、一本の長篇としてつなぎ目がなくなるまで磨き上げたのだ。そんな一冊だからこそ、本書は“小説の力”を改めて体感させてくれるのである。
 最後にもう一言。この小説において人と人をつなぐのは、縁である。縁であって愛ではない。唯一の純粋な愛情は、愛のない身内によって破壊される。『ラブレス』という象徴的な題名を戴くこの作品はそんな一冊なのである。それでありながら、だ。読み終えたあとで読者の心には愛が残る。なんという小説なんだ……
(むらかみ・たかし 書評家)

桜木紫乃『ラブレス』|書評/対談|新潮社


★★★

2013.12.3(火)

桜木紫乃「ワン・モア

ワン・モア 桜木紫乃著 寡黙な女性医師の胸打つ決意 (文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2011年12月7日付]

 柿崎美和というヒロインの造形が素晴らしい。

 安楽死スキャンダルに巻き込まれ、市民病院を追われて小さな島の診療所に赴任したヒロインだ。7歳年下の漁師と夜毎逢瀬(よごとおうせ)を続け、島内で噂になっても気にせず、漁師の妻に罵倒されても心を動かさない女性医師だ。

 その美和が島を離れるのは、高校時代の同級生で実家の個人病院を継いだ滝澤鈴音が癌(がん)にかかったからだ。滝澤医院の面倒を見てくれないかと鈴音に頼まれたからだ。

 いつも寡黙なその美和が周囲が諦めているなかただ一人、「わたしが治す」と宣言するシーンにまず胸を打たれる。

 市民病院では内科の神様と言われ、鈴音が独立するときに滝澤医院に移ってきた看護師浦田寿美子49歳のひそやかな恋、美和と鈴音の高校時代の同級生で、市民病院の放射線科の技師八木の屈折した思い。鈴音の元夫でまた一緒に暮らしはじめた志田拓郎の戸惑い。そういう周囲のドラマをきっちり描いて、たっぷりと読ませる。キャラクター造形が群を抜いているのでどんどん引き込まれていく。読み終えてもずっと残り続ける連作集だ。桜木紫乃の傑作だ。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2011年12月7日付]

内容紹介
月明かりの晩、よるべなさだけを持ち寄って肌をあわせる男と女。死の淵の風景から立ちあがる、生の確かなきらめき。つまづいても傷ついても、人生は何度でもやり直せる、きっと――。今注目の著者による傑作小説!
内容(「BOOK」データベースより)
月明かりの晩、よるべなさだけを持ち寄って肌をあわせる男と女。傷はいつしかふさがり、ふたたび生まれかわるだろう―。死の淵の風景から立ちあがる生の鮮やかなきらめきの瞬間を情感豊かにつむぐ、今注目の著者による傑作小説。
Amazon.co.jp: ワン・モア: 桜木 紫乃: 本
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2020年10月12日

10/12「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」

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10/13読了・・

2016年4月、父親を亡くし、若林さんは、8月キューバ〜モンゴル、アイスランドを一人旅をした・・キューバには全く興味がないので、事細かに旅の様子を書かれても全く絵が浮かばない。けれど若林さんのニコニコ顔、考えこむ顔ぼーっとする顔怒り顔困り顔は浮かぶのだ、邪魔なほど。ファンではないのだけれど。それほど感情や考えたことを細かに書いているということなんだろう・・他いろいろ感想や突っ込みところはあるのだけれど。・・巻末のDJ松永さんの解説文を読んで泣いて泣いて涙が止まらなくて、もういいやって気分になって読了。一人で海外旅行に行くときの注意点とかの参考にしてもいいし、げらげら笑えることか、ほんとかよ?作ってるよねとか疑ってもいいし、自分はこう思うな・・と深く自分自身を見つめる本にしてもいい・・。とてもGOODな本でした

笑えたところ・・アイスランド編、ラスト。。オーロラをみるところ!! 絶対笑わせるために話を盛ったよねと言いたくなる( ^^) _U~~くらい笑えた。今思い出してもにやけてくる

★★★

2016年4月父親を亡くし、キューバ〜モンゴル、アイスランドと一人旅をした。キューバには全く興味がないので、事細かに旅の様子を書かれても絵が浮かばない。けれど若林さんのニコニコ顔、考えこむ顔ぼーっとする顔怒り顔困り顔は浮かぶ。ファンではないのに。感情や考えを事細かに書いているということなんだろう。他感想や突っ込みところは多々あるけど巻末のDJ松永氏の解説文を読み、泣いて泣いて涙が止まらなくて、もういいやって気持ちで読了。一人海外旅行の注意点等の参考にしてもいいし、げらげら笑うもあり、深く考えるもよしの本

★★★
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2020年10月03日

芥川龍之介「羅生門」

2020.10.3

10月の朗読教室の課題は「羅生門」・・朗読ではよくつかわれる素材だそうだ。大変有名な作品だけれど私は興味がなく今回初めて読んだ。
教室で朗読してみて。。なんと恐ろしい話であることかと思い、ここまでして生きていきたいものなのか、人間の醜さを突き付けられ絶望感を感じる。さて、自宅で老婆のセリフをどう読んだらよいものかと思案したり練習しているうち・・この老婆ってすさまじくたくましい奴なんだと気が付く。たぶん十分生きてきたんだからもう死んでも仕方ないと思いで弱弱しい声で読むよね?と練習してみたけれど・・いやいやこの老婆は見た目はもうぼろぼろなのだろうけど生きる気持ち満々なんだと気づく。さらに、老婆の話を聞いた男(下人)は勇気がでたという・・とすると老婆の悪行は男には勇気を与えた善きことになるのか?と思案中。
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