2020年01月23日

吉田修一「横道世之介」「怒り」上下

2020.1.10〜

3.CIMG2962.JPG  p29 こうやって会社で嫌なことがあってもふと世之介のことを思い出すとほっとするんだよ、無理しなくてもいいよなって。世之介みたいなやつでもちゃんと生きていけるんだなあって。強くなった気になれる


東京オリンピックの年(たぶん2020年)と25年前(たぶん1995年)を行きつ戻りつ進行していくのでややこしいーー。1995年から25年後の登場人物たちはどんな人生を送っているのか、世之介はどんな関わりをしたのか・・という物語。話の流れについていくのが大変だったけど面白かったな


2014.2.24

怒り」上下

◆主人公は山崎一也 昭和59年生まれ、178センチ、68キロ、28歳。「八王子夫妻殺害事件」容疑者。逃走中
父は邦彦。めっき加工工場勤務42年、母景子、事件前は清掃のパートをしていた。一也にはなくなった兄がいた。一也は幼少時はスターのような存在だったが、小学校高学年より普通の子となる・・

他登場人物多数(多すぎぃ・・
・・愛子:「あまり役にたたないお守りのような存在・・」いないと気になるような女の子・・情にあつい・・登場人物はみな情にあつい??人ばかりのようにも思うが・・

優馬・・・広告代理店勤務。恋人?は直人。母と兄との3人家族で育つ。新聞配達をするような貧しい境遇ではあったが、地域の人のおかげであたたかい思い出が多く残る豊かな少年時代をすごしてきた
母はがんで闘病中。余命少ない。兄は友香と結婚し、生まれて間もない娘もいる。

◆直人・・・いつしか優馬の同居人となっている

殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。事件から1年後の夏、物語は始まる。逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?

内容(「BOOK」データベースより)

殺人事件から1年後の夏。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿のサウナで直人と出会い、母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合う。それぞれに前歴不詳の3人の男…。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!

Amazon.co.jp: 怒り(上): 吉田 修一: 本

【著者に訊け】吉田修一 市橋達也事件念頭に置いた『怒り』

2014.02.23 16:00:27
by NEWSポストセブン

【著者に訊け】吉田修一氏/『怒り(上・下)』/中央公論新社/各1260円

 角度や社会性を孕(はら)む「3」が、絶妙に奏功した作品だ。房総半島の港町・浜崎に暮らす〈洋平〉〈愛子〉親子の前に現れた、まじめだが過去を語らない青年〈田代〉。大手通信会社に勤務する〈優馬〉が、ある時〈発展場〉で出会った〈直人〉。わけあって沖縄・波留間島に母と身を寄せた高校生〈泉〉が、無人島の廃墟で出会う謎の男〈田中〉……。

 この3人の身元不詳の男を巡り、千葉・東京・沖縄の3地点に同時進行で隣り合う物語を、吉田修一氏の最新作『怒り』は描く。

 発端は1年前に八王子で起きた夫婦惨殺事件。現場に〈怒〉と書き殴った血文字を残し、現在も逃亡中の犯人〈山神一也〉は、大阪市内の整形外科で顔を変え、目撃情報は全国各地に及ぶ。

 実は自分の知るこの男が山神ではないかと、社会の隅々に疑念が広がってゆく光景を、「3」は皮肉なまでに象徴していた。果たして山神は田代か直人か田中か。いや、“3分の0”であってほしいと願わずにいられないほど、誰かを信じたいのに信じきれずにいる人々の“信頼”を巡る物語である。吉田氏はこう語る。

「念頭にあったのはお察しの通り市橋達也の事件です。といっても僕は彼の2年半に及ぶ逃亡劇や事件そのものより、目撃情報の通報者に興味があった。街で似た男を見た程度ならともかく、身近な人間に対して疑念が生まれていく“事件の遠景”に胸騒ぎを覚えたんですね。

 当初は立場や関係の違う設定を十数通り考えたんですが、さすがに全部は書き切れず、絞った結果がこの3地点。そして3人のうち犯人を誰にするかも決めないまま、彼らの正体を巡って引き起こされる人間模様を書き進めていきました」

〈犯行後、男は六時間も現場に留まり、そのほとんどを全裸で過ごしている〉

 帰宅直後の保育士及びその夫を殺害し、熱帯夜にエアコンのスイッチを探してか部屋中に指紋を残した立川市の無職、山神一也、28歳は、八王子署〈北見〉らの捜査を逃れ、姿を消した。左利き。右頬に3つのほくろ。また自宅に〈ゲイイベント〉の予定が残されていたことから女装の想定写真も公開し、テレビの公開捜査番組でも情報を募集したが、足跡は依然断片的だ。

 そんな中、浜崎では愛子が漁協に勤める父・洋平と田代に毎日せっせと弁当を届け、東京・桜新町にある優馬のマンションには新宿の発展場で一夜限りの関係を持った直人がなぜか転がり込んでいる。

 洋平は人を疑うことを知らない愛子をつい先日も歌舞伎町のソープから連れ戻し、2か月前から港に居着いた田代に好意を寄せる娘をどこか諦めがちに見ていた。一方優馬も仕事や家族関係に恵まれながらゲイゆえに孤独を抱え、刹那的快楽に逃げこんできたが、今では無口でどこの誰とも知れない直人を〈自分より大切〉だとすら思う。

 例えばある日の仕事帰り、優馬は両手にコンビニ袋を提げて歩く直人を見かけたのだ。袋の中で傾く弁当を彼は水平に保ちたいらしく、よろよろ歩いては立ち止まり、弁当を膝で立て直そうとする姿に笑いを堪えながら優馬はふと思う。〈相手の何を知れば、そいつを信じられるのか〉〈まさか、この姿じゃないよな〉〈この後ろ姿で相手のことを信じろってのは無理だよな〉……。

 優馬そして洋平たちも、目の前のその姿を信じてしまえばよかったのだ。相手を信じる条件や担保を求めるあまり、彼らはせっかくの信頼に自らヒビを入れ、傍から見れば奇蹟にも映る関係が失われるのは、何も本書の3地点に限らない。

「結局は相手を信じるしかないんですけど、その信頼の根が意外と脆弱なんですよね。タイトルも山神の怒りというよりは、大切な人を信じきれない自分に対する怒りで、洋平は愛子が幸せになることをどこかで信じきれず、優馬にしてもがんで入院中の母親に対する思いまで共有してくれる直人を恋人と呼べずにいる。その愛情や信頼を認めたい心に何かが蓋をする。要するに〈自信〉がないんです」

 一方泉と同級生の〈辰哉〉にも悲劇が待つ。あるとき那覇で米兵に襲われた泉との約束を彼は彼なりのやり方で守ろうとし、なおも信じあう彼らに試練を与える作家の非情を恨みたくなる。

「ですよね……。ただそれも含めて“隣町に降っている雨”みたいな部分はあると思うんですね。この中に沖縄と東京と千葉を通過する〈台風〉が出てきますが、僕らはよその町で降る雨の、傘までは心配しない。でも山神の事件が方々で信頼を蝕むように何かしら関係はあって、基地や原発問題もたぶん構図は同じなんで」

 若い泉や辰哉はもちろん、自分で自分に蓋をする優馬や洋平が、言葉にできない感情を持て余し、あるいは言葉に背かれる瞬間を氏は丁寧に掬い取り、それこそ言葉に対して全幅の信頼を置いていないかにも映る。

「確かに疑ぐり深くはありますね。例えば僕は誰かを苦手だなと思った次の瞬間、『話してみたら何てイイ人だ』と思ったり、情けないくらい意見がコロコロ変わる(笑い)。でも物事の見え方は場所や距離次第で変わるものだし、自分の言うことが常に正解だと疑わずにいられる人が眩しいくらい。要は自分に自信がないだけですけど、だから人は人を信じたいとも思えるんだし、僕の場合は小説を書くんだと思います」

 そんな吉田氏が描く事件の遠景にいつしか心は奪われ、彼らの関係を何とかして守りたいと思うほど愛してしまう。そのとき隣の雨はもう、私たちの雨だ。

【著者プロフィール】
 吉田修一(よしだ・しゅういち):1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。1997年『最後の息子』で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞をジャンルを超えて受賞し、話題に。2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞。映画『悪人』では脚本も担当し、『さよなら渓谷』など映画化作品多数。174cm、63kg、O型。

(構成/橋本紀子)

※週刊ポスト2014年2月28日号
【著者に訊け】吉田修一 市橋達也事件念頭に置いた『怒り』 – SNN(Social News Network)
吉田修一

(よしだ しゅういち、1968年9月14日 - )は、日本の小説家。

長崎市出身。長崎県立長崎南高等学校、法政大学経営学部卒業。その後、スイミングスクールのインストラクターなどのアルバイトなどを経験。1997年、「最後の息子」で、第84回文學界新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作で、第117回芥川賞候補。

2002年、『パレード』で、第15回山本周五郎賞を受賞し、同年には「パーク・ライフ」で、第127回芥川賞を受賞。純文学と大衆小説の文学賞を合わせて受賞したことで、山田詠美や島田雅彦と同じ系統のクロスオーバー作家が現れたと話題になった。

2003年、布袋寅泰のシングル『NOCTURNE No.9』のカップリング「グレイト・エスケイプ」で、作詞に挑戦。

若者の都市生活を描いた作品が多かったが、殺人事件を題材にした長編『悪人』で2007年に第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞を受賞。 

2010年、『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。

吉田修一 - Wikipedia
ラベル:吉田修一 怒り
posted by りょうまま at 14:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする